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フワフワで壊れやすいは過去の話。クルマの最低地上高を自由に変化できるエアサスでドリフトOK?

ローダウンのイメージ

日本初のエアサス搭載車は3代目スバル・レオーネだった

 社外エアサスの話をする前に、日本におけるエアサスの歴史をおさらいしよう。日本車で初めて4輪エアサスペンションを搭載したメーカーは富士重工(現・スバル)で、1984年に登場した3代目スバル・レオーネの最上級グレード4WD GTターボ系が一歩を踏み出した。それ以降、多くの日本車に採用されたが、現在、エアサス搭載車を設定する日本のメーカーはトヨタのみ。対して輸入車は、高級車種を中心に採用車種が増えている。

乗り味がフワフワしてよく壊れるというのはもはや過去の話

 純正エアサスのメリットは、コイルバネに比べて路面からの微振動の吸収性が高く、ロードノイズも低減。フラットライドな乗り味が実現できること。重量変化に左右されず、一定の車高を保つことができることが上げられる。この特性から乗車人数が変わるバス、積載量が変わるトラックなどにも採用されている。停留所でプシュッと車高が下がるノンステップバスなどは、分かりやすい採用例だ。

 登場当初にデメリットとして挙がった「乗り心地がフワフワして違和感がある」「故障でコイルスプリング仕様に変更した」という声は、現在は技術や制御系の進化、部品の信頼&耐久性向上によってほぼ解消。レクサスLSなどでは10万kmノントラブルだったという実例もあるほど。

 現在では「普通のコイルサスよりも硬い」「エアサスが付いていると分からない」というレベルにまで仕上がっている。ちなみに、エアサスに使うエアバッグは単なるゴムではなく、内部にはタイヤと同じく骨格のある構造になっている。デメリットといえば、エアを供給するコンプレッサーなど構成部品が多く、機構が複雑となるため高額となってしまうことくらいだろうか。

社外エアサスの基本は車高を簡単に上げ下げし目立つこと

 社外エアサスがアフターマーケットで目につくようになったのは2000年ごろ。何より重視しているのは純正のような乗り心地ではなく、車高を上げ下げするパフォーマンス。スイッチひとつで車高を変えられ、実用性とシャコタンを両立できるエアサスは、VIPカーやローライダーはもちろん、JDMにUSDM、ユーロ、さらにはスタンス、ヘラフラなどローダウンカスタムの流行&広がりにともない販売数は増え、ドレスアップを極めるアイテムとして憧れの存在に。

 それにともない、多くのサスペンションメーカーも市場に参入。部品の信頼&耐久性を向上させながら量産化を進めたことで、価格は20年前に比べて随分リーズナブルなものも登場した。

 とはいえ、サスキット以外にタンク、コンプレッサー、制御ユニット、スイッチ類、配管などの構成パーツが必要となるため、一般的な車高調と比較するとまだまだ高額だ。具体的には車高調なら交換工賃を含めて20万円以下で収まるが、エアサスは最低約50万円。高いものだと100万円に迫るものもある。加えて車検を通すための構造変更や記載変更を行わねばならず、定期的なメンテナンスも必要など何かと費用がかさんでしまうことを覚悟しなくてはならない。

ドレスアップ&カスタマイズ多様化によって走れるエアサスも登場!

 ちなみに、走行条件に合わせた自動調整が一般的で、乗り味を損なうようなローダウンにはできない純正エアサスも、社外のコントローラーや、コンピュータにアクセスして調整を可能とするコーディングなどを駆使すれば、気軽に地を這うようなローダウンが可能。

 また、単に低くするだけに止まらず、ボディワークを突き詰め、タイヤとのクリアランス、ホイールの出幅までを含めて、ミリ単位でこだわるオーナーにとって、無段階で車高を調整できるエアサスは、理想のスタイルを突き詰めるためのハードルが下がるといったメリットも大きい。

 また、最近はドリドレ(ドリフト&ドレスアップ)イベントやトラックスタンスのような走れるシャコタンも人気の兆しがあるため、サーキット走行やドリフト競技などで使えるスポーツ仕様のエアサスも登場している。別タンク式を採用し、走るステージや車両特性に合わせて伸び側/縮み側まで細かく減衰力を調整できるモデルをショップやメーカーが実戦を通じて開発。エア圧や減衰力など中身を煮詰め直したスペシャル品が揃い、各メーカーともハイエンド仕様という扱いだ。

今どきのエアサスなら車高調と遜色のない数字を出すことも可能

 もちろん、速さを極め、極限使用における長期的なトラブル予防を考慮すると一般的な車高調に分はある。だが、サーキットで遜色のないタイムが出せ、ドリフト競技で優勝するなど上級者でも納得レベルに仕上がっている。エアサスは基本車高を下げるアイテムなのだが、次々と新たなジャンルが生まれるドレスアップ&カスタマイズのニーズに応えるべく、今もなお進化を続けている。つまり、ユーザーの目立ちたいという欲求には際限がないということである。

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