チューニングパーツが豊富だった
ふたつめは数え切れないほど存在したチューニングパーツがAE86人気の後押しをした。吸排気系にサスペンションにブレーキといったベーシックな部分はもちろん、ハイカム&ハイコンプに過給器にキャブレターと、フルチューンの手段も多様だった。
最初はノーマルでひたすら走り込み、腕が上がったら初めてパワーアップやチューニングをしたものだ。冒頭に書いた「ドライバーを育てるクルマ」であると同時に、AE86は「ドライバーと一緒に成長するクルマ」ともいえるだろう。
パッケージングにも優れていた
もうひとつは価格を含むパッケージとしての秀逸さが挙げられる。エンジンはグロス130psだが車重は1tを大幅に下まわっており、速すぎず遅すぎずビギナーも気兼ねなく全開できるパワーだった。加えてリヤのリジッド式サスペンションはいい意味で限界が高すぎず、リスクの少ない低速でテールスライドのコントロールを練習するのに最適であった。
ユーティリティ性でいえばリヤシートは大人ふたりが窮屈さを感じずに座れるし、ハッチバックの3ドアは荷物を積むスペースが広く背もたれを倒せばさらに拡大。1台で走りから通勤やデートまでをすべてこなす、若者のスタイルに見事にハマったといえるのだ。
現在のAE86の中古車相場は、程度がよければ新車時価格を軽く上まわり、純正パーツも絶版だらけで入手しにくいのが実際のところ。レストアやコンディションを維持し続けるだけでも苦労の連続で、気軽な練習車というポジションではなくなってしまったが、多くのドライバーを育て上げた功績は今後も決して色褪せないだろう。