サーキットでは躊躇なく命を預けられる存在
「最初はR32を探していましたが良い車両が見つからず、ちょうどR34の出物があったので即決です」
このクルマのコンセプトは日常では普通に使えて、サーキット走行も可能なこと。この両立は一見簡単そうにも思えるが、じつは奥が深くて高いレベルが要求される。生半可な仕様では過酷なサーキットには絶えられない。一方、普段使いのためにある部分だけが尖らないようにオールマイティに仕立てている。
ダクト一つ見ても、取り付け強度を考えて確実に効果のある部分に走行風が導けるなど細心の注意を払っている。ほとんどノーマルの外観ではあるが、そこかしこにある飛び石の傷や、若干低められた車高など、壮絶な走りを静かに主張している。
「デモカーにも乗っていますが、それでも愛車でサーキットを楽しみたい。好きなんですね、走りやチューニングが。この商売、仕事として始めたら続きません。好きだからこそのめり込んでいけるのです」
「小川くらいのドライバーだったらわかる」という小泉代表の言葉を取材中に何度か耳にした。普通の人にはわからないが、小川氏くらい繊細にクルマや路面の状況を判断できる運転のうまいドライバーにはわかる、という意味であり、小泉代表がどれほど小川氏を評価しているかがよくわかる。
300km/h超の領域を共有できるR34という相棒
ここまでのドライビングテクニックを身に付けられた秘訣とは一体何だろうか?
「競争……、ですかね。競うことが楽しくて、負けると悔しいから抜かれないように頑張る。とは言っても特別なことはしていません。何を頑張ったかって問われても具体的には答えられないんです。ただサーキットのブラインドコーナーは少しも怖くないです。常に思いっきり突っ込めます。万が一その先に遅いクルマがいたとしても、エスケープゾーンがあるので何とかする自信があります」
その反面、スピードが怖いと言う。富士スピードウェイのストレートでは300km/h以上は出てしまう。もはや何か起きてもどうすることもできない領域だ。
「実際に280km/hでタイヤがバーストしたことがあります。見事なまでに何もできませんでした。タイヤでクルマを引っ掻き回してかなりのダメージでしたが身体は無傷。運が良かったとしか言えません」
だから入念な点検を怠らない。とくにブレーキとタイヤは抜かりなく行う。トラブルはこの辺りが多く、逆にその他の部分に不具合が出たとしても諦めがつく。
小川氏の相棒R34GT-Rは全神経を集中した命がけの走りが共有できる存在だ。
オートギャラリー横浜 小川義康氏GT-R PROFILE
■所有車両:BNR34
■年式:1999年式
■乗り始め時期:2011年11月
■現在の総走行距離:5万9,874km
■現在の車両スペック
エンジン:HKS2.8Lキット/GTIII-2530タービン×2/レーシングサクション/フロントパイプ/スーパーターボマフラー加工、APEXスポーツキャタライザー/パワーフィルター、JUN272度カム×2 NISMOサージタンク BOSCHフューエルポンプ×2/1.000ccインジェクター、ワンオフコレクタータンク/オイルキャッチタンク/オイルセパレーター/冷却水エア抜きタンク
冷却系:SARDレーシングラジエター、HKSインタークーラー/オイルクーラー、GReddyデフクーラー、ワンオフミッションクーラー BENETECクーリングパネル
電子パーツ:HKS F-CON V Pro Ver3.3/EVC5、Do-Luckアテーサコントローラー
足まわり:HKSハイパーマックスSP、CUSCOフロントアッパーアーム/リヤアッパーアーム、NISMOフロントロアアーム/リヤロアアーム
駆動系:ATSカーボントリプルクラッチ/フロント1ウェイメタルLSD/リヤ2ウェイメタルLSD Auto Gallery Yokohamaクロスミッション/試作カーボンシンクロ
ブレーキ:フロントAP RACING 6ポットキャリパー+PFC390φローター+ENDLESSパッド リヤV35純正355φローター+ENDLESSパッド Auto Gallery Yokohama強化ナックル
エクステリア:Hasemi Motor Sportリヤアンダーフィン
インテリア:RECAROシート、SPARCOハーネス NARDIステアリング、HKSサーキットアタックカウンター、NEKO AF700、CUSCOロールケージ
ホイール:RAYS VOLK RACING ZE40(11J×18+15)
タイヤ:BS POTENZA S007A(285/35R18)
パワー&トルク:620ps/7700rpm 72kg-m/6200rpm