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最近バキュームカーを見なくなった? じつは目立たず進化し活躍している「衛生車」最新事情

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TEXT: Auto Messe Web編集部 竹内耕太  PHOTO: モリタエコノス/タナカヒデヒロ

  • モリタエコノスのエコパネル式バキュームカー「EP-2」

  • 本社ロビーのミゼット・バキュームカー
  • EP-2のシェルは軽量なFRP製
  • モリタエコノスのエコパネル式バキュームカー「EP-2」
  • メンテナンス用ハッチはオーニングとしても使える
  • タンクをパネルで覆った「エコパネル車」
  • 日野デュトロをベースにしたスタンダードなバキュームカー

バキュームカーが「くさい」のは過去のお話!?

 ある程度以上の年齢の人であれば、汲み取り式トイレとバキュームカーの記憶が目と鼻に刻みこまれているだろう。1980年代以降、下水道の普及とともに激減したと言われるバキュームカーだが、2010年のデータでは全国で約1.5万台が活躍しており、今も「し尿処理」に限らずさまざまなジャンルで使われている。そのわりに、昔ほど見かけたり、そのニオイをかぐことも少なくなった気がするのはなぜなのか?

バキュームカーのトップ企業「モリタエコノス」に聞いてみた

 日本における「し尿」汲み取り用バキュームカーの歴史は、1951年に神奈川県川崎市が開発・導入したのが始まりとなる。それまで柄杓と桶で回収していたのと比べると衛生面で格段の進歩であり、以降、全国にバキュームカーが普及していくこととなる。

 消防車で知られる「モリタ」のグループ企業「モリタエコノス」は1953年に衛生車(バキュームカー)の製作販売をスタートし、現在はバキュームカーの市場で国内トップシェアを誇っている。兵庫県三田市の本社には、1964年製ダイハツ・ミゼットのバキュームカーがキレイにレストアされて展示されていた。

本社ロビーのミゼット・バキュームカー

下水道至上主義から浄化槽による水洗化へシフトする流れも

 都市部に住んでいると、社会のインフラが発展すれば下水道の普及率が上がっていくものだろうと、素朴に思いがちだ。実際、2020年度の統計(日本下水道協会)では、全国の下水道普及率は80.1%(下水道利用人口/総人口)となっていて、東京都にいたっては99.6%にも及んでいるのが目をひく。

 しかしよく見ると、徳島県18.6%、和歌山県28.5%、高知県40.8%、鹿児島県42.9%など、普及率50%前後かそれ以下の地域もじつは多いのだ。

 モリタエコノス営業本部副本部長の髙田典尚さんは、「東日本大震災以降のトレンドとして、下水道整備を敬遠がちな市町村が増えてきました。今後はむしろ下水道普及率が減っていくかもしれません」と言う。どういうことか。

「過疎化のエリアでは下水道の設置と維持管理のコストが合わないんです。災害時の対応を考えると浄化槽にもメリットが大きいということで、むしろ浄化槽の設置に補助金を出すところも多いです」

日野デュトロをベースにしたスタンダードなバキュームカー

ニオイ問題の次は「景観」問題に対応

 下水道が通っていなくても、浄化槽を設置している地域が増えてきていて、昔ながらの汲み取り式トイレの「生し尿」は減っている。浄化槽の汚泥ももちろん臭いのだが、生し尿ほど強くはないので、バキュームカーが作業しても周辺にそれほどニオイが漂わなくなっているのだ。

 もちろんバキュームカー側の脱臭器も進化している。モリタエコノスの場合、脱臭液を注入する標準タイプの脱臭器のほか3種類のオプションを用意していて、水溶液のなかを通過させることでアンモニア臭を除去できるタイプ、活性炭を使うタイプ、そして一番強力な燃焼式は、軽油を燃やして排気を全てバーナーであぶって圧倒的な脱臭率を誇るそうだ。

 しかし、ニオイの面で周辺の不快感を軽減してもなお、楕円のタンクの上にホースリールが付いている、いかにも「バキュームカーだ」とわかるカタチを嫌がる人は多い。

「うちだけバキュームカーが来ていると思われるのは……」といった住民の声もあるし、複数の市町村が共同で運営する広域し尿処理場の計画に際しても、「この見た目で地域を走ってほしくない」と忌避されてしまうことは多いのだそうだ。

 そこでモリタエコノスでは、バキュームカーのタンクをフラットパネルで覆った「エコパネル」仕様をラインアップし、導入地域の景観問題にも対応してきた。それをさらに進化させて2010年、スタイリッシュな新世代バキュームカー「EP-2」が誕生することとなる。

タンクをパネルで覆った「エコパネル車」

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