21世紀のバキュームカーはスタイリッシュ
カバーの付いていないバキュームカーが入れない地域に対応する「エコパネル」式が「覆い隠す」イメージだったのに対して、「魅せる」発想に切りかえて開発されたのが「EP-2」だ。デザインを担当した「モリタホールディングス」の近藤晃一さんはこう語る。
「ただ車両を覆い隠すのではなく、新しい提案ができないかと取り組みました。カバーはFRP製で前後左右で共通化し、おもちゃのブロックのように組み合せて構成しています。また、先代の角ばった形から丸みのある形にすることで優しく楽しいイメージを目指しました。左右のメンテナンス用ハッチは雨天時のヒサシとして使えるなど、機能面でも向上させました」
このパネルは既存のバキュームカーにも取り付けが可能で、20種類以上のデザインのラインアップから選択できる。もちろん会社やブランドのカラーにすることもできるので、イメージアップや広報活動にも役立つというわけである。
ちなみにエコパネルの上部はフルオープン。なぜならバキュームカーに屋根を付けていると、ガスが溜まって腐食しやすくなることと、ホースに砂や泥が付着するため、オープンであれば雨で流れてくれてメンテしやすいのだそうだ。
じつは飲食店やコンビニでもバキュームカーが活躍している
この最新バキュームカー「EP-2」が活躍しているのは、し尿処理だけではない。インフラ系企業がマンホールの中に溜まった雨水を吸い出すのにも使われているし、大手飲食チェーンではグリストラップ(キッチンの廃油を分離・貯蔵する装置)の清掃のために、バキュームカーに見えないエコパネル式バキュームカーを使っている。
とくに飲食店の前にバキュームカーが停まっているとイメージにマイナスとなりそうなことは、想像に難くない。グリストラップは飲食店のほかコンビニにも設置されている。ほとんどの場合、エコパネルのような中身が分からないスタイルのバキュームカーが、夜間に作業しているという。
であれば、全国のバキュームカーもすべてこういったエコパネルタイプになればいいのでは? と思うところだが……。し尿処理の関わるバキュームカーの場合、行政の指定した形式がかなり昔の条件のままで、新しいモデルに変えられないことも多いのだそうだ。
今回ご紹介した「EP-2」は全国でおよそ100台程度となかなかのレア車なので、もし見かけることがあればぜひチェックしてみるといいだろう。