イジればイジるほど速くなるエンジンに皆が熱狂
だからこそ、もっとどうにかしたら、この手綱をどうにかすれば、さらにR32GT-Rは速く走ってくれるのではないかと思わせるのである。そこでチューニングの出番となる。
エンジンの排気量はもちろんのこと、可変バルブタイミング機構まで追加できるアフターパーツが発売され、普通に買えるというとんでもない事態となった。
もちろんエンジンは内部パーツから入れ替えて、いかに下から回って上も伸びるタービンにするか、タービン選びとセッティングに試行錯誤する。
そうでもしないと決して速いエンジンではない。日本の自動車の歴史上では、もっと良いエンジンは存在した。しかし、R32のエンジンはチューニングすればするほど伸びていき、しかも9000回転で回るときには、そのフィーリングだけでなく音も魅力的だった。他社ではこの排気量でそこまで回せるエンジンは少なく、ドライバーだけでなく観客までを魅了したのが、RB26DETTエンジンなのだ。
長寿シリーズとなったことでパーツ供給も豊富に
クセのある駆動方式はセットさえ決まれば、ゼロカウンターでコーナーを立ち上がってくる姿勢を可能にした。これもまたドライバーと見る人を惹きつけた。そんな当時最新の魅力的なメカニズムが満載にされ、16年ぶりにGT-Rの名が復活したのがR32だったわけである。そう考えると人気が出ないわけがない。そして、そのメカニズムはほぼ変わらぬままR33/R34と伝承されたことで、より第2世代GT-Rのイメージとキャラクターを際立たせた。
ほぼ同じ内容の後継車両があると、月日が経ってもパーツ供給が安定しているメリットがある。「AE86」が現在でも乗れるのは、「4A-G」エンジンがAE92/AE101/AE111と後のモデルでも使われていたことが理由のひとつにある。それと同じようにR34まで存在したRB26もまた、R32の魅力を長く楽しめるようにしてくれている。このように、ある種の奇跡がいくつも重なったからこそ、R32GT-Rは今も愛されているのである。