参加者が楽しむディナーで思い出話に花が咲く
中編の締めくくりとして、ACOとルマンクラシック主催者のピーターアウトが主催するGALAディナーについて紹介しておこう。レースウィークの木曜日の夜、イベントの開始を告げるGALAディナーが行われる。ルマンクラシックに出場するドライバーやライダーとその関係者、主催者やパートナーなど1000名を越す出席者は、ブラックタイにタキシード、女性はロングドレスなどの正装に身を包むことになっている。
会場は、ルマン市最大のレポー修道院の大ホールである。その中で、テーブルを囲んでディナーと会話を楽しむというのが、このイベントのしきたりなのだ。この光景を眺めていると、やはりこのクラシック自動車競技会がいかに高貴なスポーツなのかを実感することができる。
日本からこのイベントに参加している寺田さん、関谷さん、現在のトヨタトムス85Cのオーナーである国江さんと、チームトムスの館 信秀会長、今回トムス85Cを関谷さんとともにドライブする中嶋一貴トヨタガズーレーシング・ヨーロッパ副会長が揃い、記念撮影をパチリ。
ここで私の個人的なメモリーなのだが、1985年のルマン24時間レースには私もマツダスピードチームのPR担当者として帯同していた。入社3年目の小僧だったのだが、その年トヨタチームトムスがルマンに初出場し、そのレースウィークに関谷さんがコース内のチャペルで結婚式を挙げるという話を聞いた。
すると、わがチームの監督だった大橋孝至さんが、「ミウラ、関谷に何か持っていってやれ」と言われ、チームのキュイジーヌ担当の脇 雅世さんに頼んでスイーツか何かを作ってもらったことを覚えている。それをもってチャペル(とはいっても祠のようなもので、24時間レースの日曜朝にはここで普通に礼拝が行われる)の前に行き、奥さまにお渡ししたと記憶している。
そんな話をこのGALAディナーで関谷さんに話すと、「あぁ、大橋さんがそんなことしてくれたんだねぇ」とまったく覚えていない様子だった。奥さまは、「えぇ、そうなんですか。37年前の6月でしたね。感激です。今回その祠にぜひ行ってみたいわ」と応答してくれた。少し声が震えていたような気がする。われながら、ちょっといいこと言ったな、と感じた。
※文中敬称略