日産を支えてきたL型エンジン
405psの3L V6エンジン(VR30DDTT)を搭載した本格2シーターFRスポーツ「新型フェアレディZ」が登場し話題になっている。このフェアレディZのキャラクターを確立させたのは、初代ZのS30だ。
そのS30の心臓部には1965年に登場し、1980年代にRBシリーズにバトンタッチするまで多くの日産車を支えたL型エンジンが搭載されていた。同エンジンは、直列4気筒 1.3LのL13から直列6気筒のL20、L24、L28、さらには国産初の量産ターボ車「430セドリック」のL20ETのほかディーゼルエンジンまであり、バリエーションの豊富さでは、国産随一だった。
搭載された車種も幅広く、先のフェアレディZをはじめ、スカイライン、ブルーバード、セドリック、グロリア、レパード、シルビア、バイオレット、ラルゴ、バネット……、日産の直4、直6はほとんどL型という時代があったほど。あの童夢-零のエンジンにもL28が選ばれていた。
メルセデス・ベンツの直6エンジンをお手本に開発した
このL型エンジンの特徴は、カウンターフローのSOHC、頑丈な鋳鉄ブロック、チェーンによるカムシャフト駆動だった。お手本にしたのはメルセデス・ベンツの直列6気筒エンジンといわれ、生産性が高く、恐ろしくタフネスで、実用車からスポーツカーまで使い回しの利く非常にオーソドックスなエンジンだった。
とくに流通量が多く、低価格でパーツが豊富だったのは大きなメリットで、SUキャブやソレックスキャブ、インジェクターまで吸気系は自在に選ぶことができた。また、ターボまで組み合わせることができたことで、モータースポーツやチューニングベースとしても高い人気を誇った。
1980年代半ばは、大阪のトライアルやHKS千葉、RSヤマモト、SSクボなどの名うてのチューナーがL28改を積んだチューンドZで、谷田部(日本自動車研究所の高速周回路)の最高速アタックでしのぎを削った時代。
当時、国産チューナーが打倒を目指していた光永パンテーラの最速レコード=307.69km/hを破ったのも、L28改の3Lツインターボ(ギャレットTo4タービン×2 OERキャブ)のトライアルZ(307.95km/h)だった。のちにHKS千葉も同じくL28改3シッターツインターボのZで313kmの最高速をマークしている。というわけで1980年代最速の国産エンジンはL型といってもよかった。