これまでにも個性的なクラウンは存在した
新型クラウンが発表されて、ビックリした方も多いだろう。SUV化という噂は以前から出ていたので、その点では正解ではあったのだが、セダンやワゴンなども出てくるとは想像を超えたものだった。やっぱりセダンかも、という話もなくはなかったが、まさか全部入りとは……。
これがクラウンか? という声も聞こえてくるが、クラウンの歴史を振り返ってみると、いわゆるロイヤルサルーンという保守本流、鉄板路線に加えて、意外に派生モデルやユニークなモデルもあったりする。今回は王道ではないクラウンを見ていこう。
クジラのあだ名が付けられた4代目
こちらは派生ではなく、本流。スピンドルシェイプと呼ばれる丸みを帯びたデザインで、いわゆるクジラクラウンと呼ばれる。希少性とユニークさで今では人気だが、当時としては奇抜すぎてクラウンとしては販売が振るわなかったモデルだ。新型クラウンの発表会でも、「クラウンは安心感がないとダメ」的にサラリと流されてしまっていたほど。ちなみにサルーンをグレード名に使った最初のクラウンでもある。
特徴的なリヤビューが与えられた9代目
4代目以来の問題作とされたのがこちら。理由はお尻を丸くしたから、という単純なもの。でも、クラウンらしさが確立していた当時(1991年登場)は、これが大きな問題だったし、実際に販売は急落。ライバルだった日産のセドリック、グロリアに負けるときもあるほどだった。マイナーチェンジで急きょ、クラウンらしい普通のリヤまわりに変更された。この後、クラウンのハードトップは冒険することはなくなった。
ハードトップとは別の道を歩んだクラウンセダン
タクシー需要も含めた、本来のクラウンらしさが残っていたのがセダンだ。5代目クラウンに4ドアハードトップが登場したことで、切り分けられて独自の道を歩むことになった。1974年に実質の初代が登場して、ベーシックなセダンシリーズとして2018年まで作られ、通算6代となる。パトカーやタクシーなどにも使用されていたので覚えている方も多いはず。
グレード名はスーパーデラックスなど、定番的な感じのもの以外にスーパーサルーンやロイヤルサルーンというクラウン的なものもあり、直6を積んだグレードもあった。
タクシーなどでも活躍したクラウンコンフォート
セダンから派生したタクシー専用モデルで、教習車にも使われた。ちなみにクラウンコンフォートが中型枠で、コンフォートは小型枠となる。1995年に登場して、2018年に安全基準にパスできないことから生産終了になった。コンパクトFRでもあることから、峠を中心とした走り屋にも愛され、TRDからはスーパーチャージャーを装着したコンフォートGT-Zスーパーチャージャーも登場した。
ハードトップの魅力を生かしたクラウンエステート
バン、そして乗用車登録としたワゴンは歴代で存在したが、ロイヤルサルーンをベースにワゴン化したモデルでアスリートもラインアップされていた。デザインはクラウンらしい高級感あふれるもので、内装も同様。本革シートも用意されていて、満足度の高い高級ワゴンと言っていいだろう。2007年に消滅したが、新型クラウンにはステーションワゴンが存在するため、久々の復活となる。
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いつの時代もフルモデルチェンジの際は賛否両論巻き起こるもの。新型クラウンも、コアなファンからは「クラウンらしくない」という意見も聞かれるが、クジラの愛称がついた4代目クラウンのように、後に見直される時が来るかもしれない。ただし、メーカーとしては「いま」販売台数が伸びてくれなければならないわけであるが……。今後の動向を見守るとしよう。