先代クラウンとほぼ変わらない最低地上高が与えられた意味とは
2022年7月15日にワールドプレミアされた16代目となる新型クラウン。予想通り、クラウン初のクロスオーバーモデルが第一弾として発売されるが、なんとスポーツ/セダン/エステートと計4種類のボディタイプが用意されたことに驚きが隠せなかった。これは先代モデルが体験した、世の中のセダン離れが大きく影響しているのだろう。何しろVIP車/公用車/社用車の主役は、トヨタの高級車としては黒塗りのアルファードが圧倒的な存在。
しかし、クロスオーバーというネーミングに過大な期待は禁物である。トヨタがクロスオーバーモデルを「セダンとSUVの融合」と謳っているだけに、乗り降りのしやすさも重視。なによりWEBカタログの主要諸元の最初に記されているのが最低地上高であり、その数値は一般的な乗用車と変わらない145mmだ。つまり先代クラウンの135mmに対して10mm地上高が高くなっただけで、巷でトヨタ内のライバルか!? と名前が挙がるハリアーの190mmと比べると大きな違いがある。
「セダンとSUVの融合」とはおもにスタイリングとデザインのことであり、最低地上高が示す走行性能、走破性はセダン基準と考えるのが妥当ではないだろうか。
新型クラウンに悪路走破性を求めるのは誤りでしかない
つまり、RAV4(最低地上高最大200mm)やライズ(最低地上高185mm)、ヤリスクロス(最低地上高170mm)、カローラクロス(最低地上高160mm)のように、オフロードでもガンガン進むことができるクロスオーバーモデルとはちょっと異なるキャラクターである。
ゆえにクロスオーバーモデルとはいえ、アウトドアに向いているかと言えば、洗練されたスタイリッシュすぎるエクステリアデザインはもちろん、クラウンそもそものイメージからすれば、アウトドアフィールドでは浮いてしまう存在になりかねない。つまりアウトドア中心に使うのであれば別の選択肢、とくにRAV4やライズ、ヤリスクロスあたりを薦めたい。
そもそも室内空間の設えが車中泊などのアウトドア向きではない
日本のアウトドアフィールドは、アクセス路、構内路を含め、整備されているのが普通で、新型クラウンのクロスオーバーモデルで行けないことはまったくないだろう。しかし新型クラウンのクロスオーバーモデルがあまりアウトドアに適していないと想像できる理由は、最低地上高よりも室内空間、シートアレンジ性、そしてラゲッジルームにある。
新型クラウンのクロスオーバーモデルの後席は、どう見ても高級感溢れるセダンそのもので、倒してラゲッジルームとつなげることでフルフラットアレンジができるような仕様にはなっていない。しかもラゲッジルームはセダンのトランク同様で、多くのクロスオーバーモデルやSUVが採用する、大きく開き開口するバックドアを持ち合わせてはいない。見た目はクロスオーバーでも、使い勝手はセダン基準&セダンのパッケージングというわけだ。
当然、アウトドアに出かけることはできても、後席とラゲッジルームをフラットにつなげてのベッド化やハリアーでは可能な仮眠、車中泊はできない。さらにラゲッジスペースそのものも容量的、後席格納による拡大を含め、アレンジ性もまたセダンと変わらないレベルとなる。もちろんそこは意図的であり、トヨタのSUV、クロスオーバーモデルの領域を侵さない……いう配慮なのかもしれない。
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よって、もし新型クラウンでアウトドアを楽しみたいなら、アウトドアフィールドにより似合うはずの、おそらく後席を倒して格納した後席部分とラゲッジルームをつなぐことができるであろう、復活したエステート(ワゴン)の登場を待つべきではないだろうか。