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夢はR34とR35の「GT-R」2台持ち生活! 隠れGT-RファンだったGT500ドライバー平手晃平選手の愛車遍歴

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TEXT: GT-R Magazine 松本奈巳  PHOTO: GT-R Magazine

プロドライバーは子供に夢を与えなければならない

 平手選手は日産に移籍したらGT-Rに乗ろうと決めていた。

「GT500ドライバーはそのときレースに出ている現役のクルマ、もしくはフラッグシップに乗るべきだと思っています。そうすることで子供たちや若者に夢を与えられると思っているんです」

 これはトヨタ時代からの平手選手の信念だ。本来ならばR34に乗りたいとも思ったが、まずはR35だと決めた。R35にも大いに興味があり、たまたまいい縁に出会えた。2019年5月には現在の愛車、MY08(2008年モデル)のR35GT-Rを手にしていたという。

「でも、しばらくは伏せていました。レースで結果を出してから『じつはR35持ってます』と発表したかったんです。日産に移籍したからって調子いいよなと思われたくなくて。本当にGT-Rが好きなので誤解されたくなかったんです」

 移籍した2019年は日産勢にとって厳しいシーズンとなった。年間シリーズの8戦中、日産はたった1勝しかできなかったのだ。その唯一の勝利をもたらしたのが平手選手の駆る3号車だった。これでR35をファンにお披露目できたのだろうか?

「それが、SUGOの優勝より少し前にSNSで公表しちゃったんです。もう我慢できなくて。GT-Rに乗っているんだと自慢したいじゃないですか。だからそれまでもドライブに出掛けるとチラッと後ろにR35が写っている写真を投稿したり、匂わせたりもしていました」

 ずっと憧れていたGT-Rでレースを戦い、日常でもオーナーになれた。その喜びを表現したくなるのは当然だ。平手選手はレースウイークのサーキットへの移動はGT-Rと決めている。普段の足としても大いに走る。子供たちの保育園の送り迎えにも使っているそうだ。

いつかはR34とR35の2台をガレージに並べて眺めたい! 

 日産1年目にしてGT500で勝利。

「SUGOは自信がありました。速さはあるとわかっていましたし。しかし予選日はチームメイトのフレデリック・マコヴィッキ選手がイマイチ乗れていなくて、まさかのQ1落ち。それでも決勝日は天候も荒れそうだし、上手くいけば表彰台には行けるだろう、と。まさか優勝できるとは思っていませんでしたけどね」

 決勝では前日の鬱憤を晴らすかのように神掛かった走りを見せるマコヴィッキ選手。あと数周でGT-Rで勝てると確信できたとき、平手選手はあらゆる喜びの感情を抑えることができなかった。

「2年前トヨタでGT500に乗れなくなり、日産が拾ってくれて、やっと期待に応えられる。しかもGT-Rで勝てる」

 この第7戦SUGOは生涯忘れられないレースだと平手選手は語る。レース後真っ先にNISMOの片桐隆夫CEOや松村基宏COO、そして田中利和監督に感謝を伝えた。松田次生選手やロニー・クインタレッリ選手が平手選手のもとに駆け付けてくれたのもうれしかったという。

 こうして結果を出したことで、大手を振って愛車のMY08に乗ることができるようになった。2020年に入るとレーススケジュールが変更され、前半は余裕ができた。そうなると愛車に手を加えたいという欲求がムクムクと沸き起こる。

「自分でできることを少しずつやっています。エンジンカバーを塗装したり、リヤバンパーも外してUSマーカーを取り付けたり。ボトムの赤いラインは娘と一緒に自作で貼ったものなんです」

 自分でイジるのが好きだと話す平手選手。しかしR35をガッツリとチューニングすることはない。

「自分の夢はまず23号車に乗ること。そしてGT-RでGT500チャンピオンになることです。実現したら記念に今度こそ大好きなR34を買いたいと思います。中古車の価格が高騰していますが、きっといい出会いがあると思っているんです。だからR34資金を貯めなくては」

 平手選手と言えば、印象的なのが日産加入前の2018年「NISMOフェスティバル」。今考えてみれば翌日に会場の富士スピードウェイでは日産系GTチームのオーディションがあったのだが、その会場で平手選手は目を輝かせながらGT-R Magazineブースに展示していたスタッフカーのR34GT-R V-spec II Nurを食い入るように見ていたのだ。当時は「トヨタの平手がなぜ?」と話題になったものだ。

「覚えていますよ。あの日は会場中のR34に食い付いていました。と言ってもNISMOフェスティバルは初めてじゃないんです。2008~2011年は当時フォーミュラ・ニッポンで乗っていたチーム・インパルの手伝いを言い訳に毎年行きました。その後もプライベートで足を運んでいます」

 中学生のころから憧れ続けるR34のためにも、2021年は正念場だ。

「昨年は確かに苦しいシーズンだったと思います。しかし、最終戦の付近でGT-Rがいいパフォーマンスを見せるようになりました。シーズンオフの間にベースアップできればしっかり戦えると思います。千代勝正選手と組むのは初めてだったので、コミュニケーション不足もあったと思います。そういった面でも2021年はどんどんよくなると思います」

 いつかはレーシングドライバーという職業から引退するときが来る。それでも平手選手はGT-Rに乗り続けると話す。

「一軒家を建ててガレージにはR34とR35の2台のGT-Rを並べることを想像してニヤニヤしています。GT-R Magazineを読んで、自分と同じことを考えている人はいっぱいいるんだと感じているんですよ。GT-R好きの方が喜ぶのはGT-Rがレースで勝つことだと思っています。だから夢を叶えるためにも2021年は結果を出したいです」

 R34に魅せられた14歳の少年は、今もそのままの心で夢を追い続けている。

(この記事は2021年2月1日発売のGT-R Magazine 157号に掲載した記事を元に再編集しています)

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