シリーズで次々と愛称が誕生
モデルチェンジで新型が登場するたびに、愛称も新しくなっていきました。その好例のひとつがスカイラインです。プリンス自動車工業が日産自動車に吸収合併されて以降のモデルには、次々と愛称がつけられていきました。まず初代のスカイラインGT-Rが追加ラインアップされた3代目スカイライン(C10系)には“ハコスカ”の愛称がつけられました。
文字通り箱型のスカイラインでしたから、これは納得できました。また語呂も良く“ハコスカ”だけでなく“ハコスカGT-R”もポピュラーに使われています。この“ハコスカ”がモデルチェンジを受けて登場した4代目スカイライン(C110系)は、コマーシャルにケンとメリーというカップルが登場したことで日産としても「ケンとメリーのスカイライン」をキャッチコピーに使用していましたが、一般的には“ケンメリ”と省略されることが多かったです。
また“ケンメリ”をもじって4ドアシリーズを“ヨンメリ”と呼ぶのも一般的でした。以後のモデルではキャッチコピーの一部を愛称代わりに使用するケースも見られましたが、6代目(R30系)の後期モデルで、とくにグリルレスとなったRS系グレードを“鉄仮面”と名付けたセンスは流石。ベスト・ニックネームとして表彰したいくらいです。
一方、ホンダも旗艦モデルのシビックには2代目以降、メーカー主導(?)で愛称がつけられています。2代目が“スーパー”、3代目が“ワンダー”、4代目(EF型)が“グランド”、5代目(EG型)が“スポーツ”、6代目(EK型)が“ミラクル”、7代目(EU型)が“スマート”と名付けられていましたが、8代目以降は仕向け地別にモデルライフが異なるようになったこともあって、メーカー自らが愛称をつけることもなくなってきました。
もっともファンの間では“スポーツ”は、とか“ミラクル”が、ではなく多くの場合“EG”とか“EK”と型式で呼ばれることがほとんどでした。
スタイリングの特徴から名付けられた愛称
さて、最後になりましたが、そのクルマのスタイリングの特徴から名付けられた愛称というのも少なくありません。そんな愛称のトップ5を紹介していきましょう。ただしトップ5とはいっても個人的に勝手に選んだ負い目もあるので5台、同率として発表年代順に紹介することにします。
バリカンコロナ
まずは“バリカン”。これは1964年の9月に登場したトヨペット・コロナ(3代目となるT40/50系)の愛称で、横桟の並んだフロントグリルのイメージから命名されたようです。トヨタ自身はフロントバンパー上部を頂点として、リヤへ一直線に流れるサイドビューをアローラインと称して自信満々だったのに、“バリカン”という愛称。それでも愛称が与えられるのは人気がある証拠、ですよね。
ダルマセリカ
続いては“ダルマ”。これは1970年の12月に登場したトヨタ・セリカ(初代のA20/30系)の愛称。真正面から見たフロントのデザインで、左右が上に跳ね上がったメッキ製のバンパーがダルマのひげ面に見える、というのが理由のようです。これも腕を奮ったデザイナーにしてみれば、ダルマのひげ面かよ! となったかもしれないです。
クジラクラウン
3台目もトヨタ。“クジラ”の愛称が与えられたのは1971年の2月に登場したトヨタ・クラウン(4代目のS6/7系)。丸みを帯びたスタイルからクジラがイメージされるとの理由で命名されたようです。営業的には失敗作とされていますが“クジラ”の愛称とともに、今もなお根強い人気を誇る1台です。まさに愛称があるのは人気モデルの証拠、ということでしょうか。
サメブル
続いては“サメ”。これは日産が1971年に登場させたダットサン・ブルーバードU(4代目の610系)のラインアップへ、1973年8月に追加投入したブルーバードU 2000GTの愛称です。2000GTシリーズは6気筒エンジンを搭載するためにフロントノーズ部分を延長(ホイールベースで150mm、オーバーハングで55mm)していましたが、伸ばしたオーバーハング部分の冗長さをカバーするためにウインカーの後方にスリット風のプレスラインを入れています。それがサメのエラに似ていることから命名されたようです。“鮫ブル”とも呼ばれていました。
ハマグリ
最後の1台が“ハマグリ”です。これは1975年の日産シルビアの愛称です。うねりの強いデザインからこう名付けられたと伝えられています。このようにスタイリングからイメージして愛称をつけるのが一般的ですが、いずれにしても愛称で呼ぶのはそのクルマを愛しているから。愛称を授かったクルマは、本当に幸せ者、ということでしょう。