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なぜ日産初代「プリメーラ」は「欧州車に追いついた」と言われたのか? 当時の「ゴルフ」オーナーが乗って驚いた実力の高さとは

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TEXT: 島崎 七生人(SHIMAZAKI Naoto)  PHOTO: 島崎七生人/日産自動車

  • 初代プリメーラのカタログ

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  • 初代プリメーラの広報写真
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  • オペル・ベクトラのカタログ

ルックスから走りまで徹底的に欧州風味だった

 もはや時効成立のこととして書かせていただくと、初代P10型日産「プリメーラ」の量産型を最初に見たときの筆者の第一印象は、「オペル・ベクトラにそっくりじゃないか!」だった。ヤナセが扱う直前の東邦モータース時代のベクトラのカタログ写真も画像ギャラリーのなかでお見せしておくが、プリメーラの訴求色だったダークグレーパール(ガンメタ)やダークレッドパールは、確か奇しくもベクトラにも用意があり、なので同じボディ色同士だとなおさら「似かよっている感」が強くあった。

やわらかなデザインで英国でも生産していた

 空力を意識した、コーナーを丁寧に丸めて作られたデザインも、同じ時代のクルマの証拠のように相通じるもの(?)があったし、第一同じミドルクラスセダンという、まさに真っ向ライバル車でもある車種同士でもあったのだ。後年、このプリメーラのデザインを日産在籍時代に担当された前澤義雄さん(がご存命だった頃)に、恐る恐る「ベクトラのデザインをどう思われますか?」とお訊きしたことがあったが、「どうとは?」とだけ返され、おののいてそれ以上はお聞きすることができなかったのは、今となってはとても残念なことのひとつだけれど……。

 誤解のないよう追記しておけば、初代プリメーラとベクトラは雰囲気が何となく似ていただけであり、実際には工業製品然としてやや冷たいベクトラに対し、プリメーラはシンプルかつクリーンでありながらもボディの面質にやわらかなニュアンスがあり上品な仕上がりだった。ちなみにプリメーラはアメリカ市場向けのインフィニティブランドに「G20」として投入され、同系列のデザインをもつセダンにマキシマ(J30)があった。

 なおP10プリメーラの最初のモデルは1990年2月に登場、1991年10月になると正真正銘のUK製の5ドアが輸入された。筆者は音楽を聴くのは大好きであるが自分では何も演(や)れないので楽器の種類にはトンと疎いのだが、5ドアのカタログ写真には後席を倒し、そこにチェロだかコントラバスだかのケースを寝かせて載せた写真が載っていたりするが、4ドアセダン+αの実用性とスマートさ、GTの赤いエンブレムを付けスポーティさをさり気なくアピールしていたのが5ドアだった。

工学的にこだわり抜いた「プリメーラパッケージ」

「プリメーラパッケージ」。もともとスペイン語で「第一級」の意味を持つ車名だけに、なんとなくパッケージングまでも上質感があるように思えた……というか、まさにパッケージングと走りにこだわったヨーロッパ車風味のセダンが、このプリメーラだった。

 とくにカタログには、まるでNTC(神奈川県・厚木にある日産の開発拠点)のスタジオの壁に貼ってありそうな車両レイアウト図が大きく見開きで載せられていた。そこに低空気抵抗のためのロング&フォワードキャビン、ダブルリンクヒンジを用いたハイデッキのトランクルーム、低全高のラジエターを採用した低いノーズなどの説明が添えられ、見るからにそれまでの日本のセダンとは考え方が違う「本物感」を漂わすコンセプトが表現されていた。

 さらにページをめくると、クルマ好きならプリメーラの背景にブレて写っているのがB3型アウディ80、メルセデス・ベンツ190E、E30型BMW3シリーズ、その後ろにボルボ940セダンとわかる、当時の欧州人気車種をからめたカットも。いかに欧州車を意識していたかがわかる。

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