カスタマイズ業界にも、フォージドカーボンの流れが押し寄せる
カーボンコンポジット(CFRP)は、金属素材に比べて高強度で軽量であることから、モータースポーツでは早くから取り入れられ、スーパーカーやスーパースポーツの世界ではボディパネルはもちろん、モノコックにも広く使われる素材だ。カーボンクロスの編み方(平織りや綾織り)によっても表情が異なり、レーシーな雰囲気を演出することができるため、1990年代後半あたりからカーボンパーツやカーボン柄のアイテムが流行した。
そもそも軽量であることが大きな特徴となるカーボンなので、カーボン(ルックも含めて)のサイドミラーカバーやセンターコンソールパネルを装着したとしても、むしろ重量増になるだけで本末転倒であることは百も承知。それでもレーシーな雰囲気に仕立てたくて装着したという人も多いだろう。
この気軽に愛車をレーシーに仕立てることができるカーボン柄に新たなムーブメントが起こっている。それが、フォージドカーボンだ。金型にカーボンファイバーをランダムに押し詰めることから、同じ模様の仕上がりがふたつとしてなく、美しいマーブルのような柄が特徴だ。これまでの平織り・綾織のカーボンとは違い、高級な雰囲気を漂わせているため、レーシーとは違う路線でのカスタムにも採用されている。
最近ではファッションアイテムなどでも取り入れられていて、クラッシュカーボンやコンポジットカーボン、チョップドカーボンとも呼ばれることもある。ウラカン・ペルフォルマンテに採用されたあと、欧州のチューナーに始まり、最近では日本のチューナーもハイパフォーマンスカーなどに対して徐々にフォージドカーボンのパーツを提供しつつある。ツヤあり、マット仕上げの両方が存在し、どちらもスポーティながらもプレミアム感が高い印象である。では、愛車にフォージドカーボンをどのようにして取り込めばいいのだろうか。
本物だけが持つ圧倒的な存在感
まず、本物のフォージドカーボンのパーツを装着するという正攻法がある。ボンネットやエアロ、さらにドアミラーカバーなどの小物もリリースされるようになった。
本物のフォージドカーボンの奥行を感じる造形や光の当たり方は独特。表層部にコーティングされたクリアの輝きと相まって美麗なルックスを誇る。ただし、エアロパーツなどは車種専用品となるため、設定されていない他車種への流用は物理的に不可能。そして、フォージドカーボンはコストがかかるだけに、高額にならざるを得ないというマイナス点もある。
シームレスな装着が可能な水圧転写
では、本物のフォージドカーボンではなく、フォージドカーボン柄でそれらしい雰囲気を手に入れるにはどうしたらいいだろうか。そこで注目したいのが水圧転写だ。
水圧転写は塗装方法の一種で、エアロパーツなどを一度ペイントしたあと、水を張った水槽にフォージドカーボン柄の極薄の転写シートを水面に浮かべ、対象パーツを転写柄から水中へくぐらせることでフォージドカーボン柄を密着させる。それだけにパーツとフォージドカーボン柄の一体感は格別である。
曲面でも違和感なく柄が描かれるので、パーツを車両に組み込んでしまえば、継ぎ目のないフォージドカーボンフォルムが完成する。ただし素人では転写作業は難しく、腕利きのショップにお願いするのが一般的だ。
実現できるパーツの大きさには限界があるが、転写シートの大きさに加えて水槽に入る範囲内のパーツであれば転写させることは可能だ。基本はペイントなので、表面仕上げはクリア塗装を使用する。グロスでもマットでも自由自在だ。
手軽に貼ってアクセントとなるラッピングフィルム
最後に紹介するのがラッピングだ。もちろん、こちらも本物ではなくフォージドカーボンの雰囲気を忠実に再現するものである。ラッピングフィルムにて、リップやディフューザーにワンポイントで施工することで、単色でエアロを塗装するよりもアクセントとしての幅が広がる。
車種や場所を選ばず手軽にトライできるため、取り入れやすいのも特徴。貼り込みにはもちろん経験や技術は必要だが、フィルムさえ手に入れることができれば、自宅で施工することも可能だ。
ディフューザーなどのワンポイントに、さり気なくあしらうのが大人の嗜みと言えるのではないだろうか。
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いま、カスタム業界でも注目を集めつつある素材、フォージドカーボン。本物のパーツは無理でも、手軽に雰囲気を楽しめる水圧転写やラッピングなどでチャレンジしてみてはいかがだろうか。