自動車業界にもたくさんの「ブーム」があった
歴史を振り返ってみると、ひと口にクルマと言っても、さまざまなブームが起こっている。最近ではあまり大きなものはないが、「上げ系」などがあるし、車種でいうとSUVもブームと言っていいだろう。その昔はもっと大きなブームとなっていたものもあり、そのひとつが「街道レーサー」ブームだ。
自動車雑誌の企画から人気に火がついた
ご存知のない方に説明しておくと、街道レーサーとは今は無き自動車雑誌『ホリデーオート』から発生したブームで、名物コーナー「Oh My!街道レーサー」は爆発的な人気を誇った。1980年代に発生したもので、自動車雑誌がブームを作り、ブームを牽引した、よき時代といっていい。
出てくるクルマはいわゆる「族車」だが、もともとは1970年代から1980年代にかけてこれまたブームになったレース、「グラチャン(富士グランチャンピオンレース)」の出場車両をモチーフにしていたものが多かった。そこから裾野が広がって、チバラギ仕様や福岡仕様といった独自の仕上がりが登場。ただ、背景はどうであれ、一般的には族車の範疇ではあった。
その内容も、シャコタン、深リムホイール&超ワイドフェンダー。タイヤは引張り、タケヤリデッパやダミーのオイルクーラーなど。ロングノーズ化も定番で、ボンネットの先が極端に伸びていたのが特徴だ。
ベース車両はなんでもOKというわけではなく、人気車種が存在した。そこで当時、人気だった車種を振り返ってみよう。
トヨタ・チェイサー/マークII/クレスタ
街道レーサーには、セダンやクーペが基本というか、それ以外は似合わない。代表格は60系、70系だ。スクエアなボディのサルーンというのは、ベースとしてはかなりよかった。
トヨタ・ソアラ
初代と、そのイメージをそのまま踏襲した2代目が人気だった。前述のマークII三兄弟もそうだが、新車で売れたクルマは中古車も多く価格もこなれていたので、ベース車として普及したというのもある。
日産ローレル(ブタケツ)
今でも暴走族のイメージが強いのがこちら。年式は古めながら、街道レーサーのベース車として愛された。
日産スカイライン(ヨンメリ)
ケンメリの4ドアセダンをヨンメリと呼んだ。ノーマルでは格好悪くて不人気だったが、独特の形が、ベタベタのシャコタンとなると際立った。パープルなどのボディカラーが似合った。
日産フェアレディZ(S30型)
こちらもブームより古いベース車になるが、グラチャンのイメージが強かったこともあり、ワークスフェンダーと呼ばれる巨大なオーバーフェンダーや羽根が似合ったということもあって、人気は高かった。中古車がかなり安かったというのもあるだろう。
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以上、街道レーサーのベース車について振り返ってみたが、型にはまらないのも街道レーサーの特徴で、そこが盛り上がったポイントでもある。強いて言えば、3ボックスのセダンかクーペ程度、というのがベース車としての認識だ。また、軽自動車をギトギトに改造したものがあったりなど、アイディアと工夫をアピールしていただけに、車種という点で見るとかなり幅広かった。