気になる水温油温は何度が適正なのか?
エンジンを冷やす冷却水(クーラント)の温度はもっとも重要な数値。これが上がりすぎるとオーバーヒートしてしまう。本格的にオーバーヒートしたらエンジン全体が歪んでしまい、直すよりも交換の方が安くなってしまうレベルだ。
クルマの年式によって適正温度は変わってくる
では、水温は何度が適正なのだろうか。「80℃」と言いたいところだが、正解かどうかは微妙。1990年代以前のクルマなら正解なのだが、現代のクルマでは不正解となる。
2000年代に入るまでのクルマは水温ターゲットは80~85℃くらいで、100℃になったらクーリング走行をするか、水温対策を施す必要があった。
ところが、現代のクルマはそもそも設計温度が変わっている。もっと高い温度で燃焼室の温度も上げて、排気ガスをクリーンにしようという設計なのだ。そのため2010年以降くらいのクルマなら90~100℃付近がターゲット温度となる。80℃だと低すぎて、エンジンは水温を上げようとして燃料の量を補正してしまったりするのだ。
水温の安定はサーモスタットがカギとなる
この安定する温度はエンジンと冷却系の熱量とのバランスで決まるのだが、普通に街中や高速道路を走っていたら、まず間違いなく冷却系のキャパシティの方が大きい。そうでないとオーバーヒートしてしまう。それでは安定水温を決めているのは何かというと、サーモスタットだ。
サーモスタットの設定温度が90℃だったら、水温が90℃になったらラジエターにクーラントを送って冷却し、89℃以下になったらサーモスタットが閉まって、ふたたびクーラントをエンジン内で循環させて温度を上げるようにする。この繰り返しが行われるので、サーモスタットの温度で安定水温がほぼ決まるのだ。
サーキット走行を前提にするとサーモスタットをより開弁温度の低いものに交換することがある。ローテンプサーモと呼ばれるもので、たとえば60℃からクーラントをラジエターに流すことが可能となる。
本来なら低すぎる温度だが、サーキットで全開走行をすると温度はあっという間に上がる。危険温度が110℃だとしたら、60℃からラジエターにクーラントを回すのと、90℃からラジエターにクーラントを回すのでは、前者のほうが水温が危険温度になるまでの時間を稼げるのでサーキットでは有効なのだ。
しかし、街中でこれを使うと水温は60℃か70℃くらいまでしか上がらなくなってしまう。そうなるとつねに低水温補正が掛かって燃費は悪くなり、エンジンも本来の性能を発揮できずダメージを負うことさえある。良かれと思って水温を下げてもマイナスしかないこともあるのだ。
エンジンオイルも年式によって適正が異なる
同じようにエンジンオイルの温度も、適正範囲は90~110℃くらい。具体的には水温同様に古いクルマは少々低く90~100℃くらい、最近のクルマなら110℃でも全然問題ない。しかし、120℃を超えるようならオイルクーラーの装着を検討するか、温度が上がったオイルは早めに交換すること。
130℃越えに迫るようだったり、耐久レースなど高温で走り続けなければいけないなら、そこで初めてオイルクーラーが必要と言える。
オイル自体も100℃くらいで使われるように設計されている。低すぎる温度だと本来の添加剤が機能しないことがあるためだ。温度域によって、低温で機能する添加剤、高温で機能する添加剤など成分が分かれているので、温度が低ければ優しい状況になるというわけではないのだ。
エンジンを守ってくれるオイルクーラーにも注意点がある
ある程度温度が上がるならオイルクーラーの取り付けもありだが、オイルクーラーを取り付けるとフィッティング箇所も増え、それだけ漏れるリスクもある。
もしも大量に漏れたら、サーキットの路面や、一般道の路面を汚すことになり、火災のリスクもある。さらにエンジンは突然油圧ゼロとなってしまい焼き付く可能性も高い。そうなると気軽に取り付けるべきものではなく、本当に必要かよく検証した上で、リスクも考慮しつつ取り付けるものなのである。
まずは社外メーターで現状の把握から始めよう
最近はOBD IIコネクタに差すだけでOKな追加メーターで水温を見られることが多く、油温も一部車種では見られる。まずはOBD II取り付け式のメーターで現状把握をするところから始めたい。純正の水温計では針が動き出したときにはオーバーヒート寸前になっている場合もあり、詳細な状態把握には向いていないのだ。もっともGR86では純正メーター内で水温と油温が数字で見られたりと、そのあたりの数字が見えるようになったクルマも増えてきている。