高級車を中心に多く採用されていたスタイル
セダンやクーペの衰退によって、近年は「ハードトップ」という言葉はあまり聞かなくなったが、一時は高級車やデザインにこだわった車種では採用されていた。
Bピラーが外から見えないのが特徴
まずハードトップとはどういった形状かというと、センター部分、つまりBピラーがないものを本来は指す。ただし、それでは剛性や安全性に欠けることもあって、外から見えないようになっているのが一般的だ。ドアについても窓枠があるとBピラーがあるように見えてしまうので、サッシュレスであることも特徴となる。
ハードトップとは直訳すれば「硬い屋根」。何に対して硬いのかというとソフトトップ、つまりオープンカーとなる。オープンカーの場合は当然Bピラーがなく、その点をモチーフにして、スチール製の屋根を採用しているので、ソフトトップに対してハードトップと呼ばれる。
日産車にはピラーレス車が多かった
冒頭でBピラーは隠れて外からはほぼ見えないようになっているハードトップが多いと紹介したが、自動車創成期は実際にBピラーがない車種もあった。とくに2ドアハードトップの場合はリヤドアがなく、ピラーがなくても構造的に問題になりにくいことから、後部の窓には前方の窓枠がないものも多かった。
さらに一時、日産がとくに力を入れていたのが、4ドアのピラーレスハードトップ。セドリック/グロリア、ローレル、そしてレストアで話題になったシーマなどで採用していて、日産らしさをアピールしていた。ちなみに後ろのドアはどうやって取り付けられているかというと、ドアの高さの支柱が立っていてそこに付けられていた。
当然のことながら、窓をすべて全開にすると、巨大な開口部が出現して開放感はかなりものだったし、さらにピラーや窓枠がないため、ボディ上部のスッキリとしたデザインが魅力だったりもした。
安全性の問題から減少傾向に……
ハードトップが衰退したのは、冒頭で触れたように、そもそものセダンやクーペが少なくなってしまったこともあるし、側方の衝突に対して弱いということもある。ちなみに伊藤かずえさんが愛車とするシーマのレストアでも、Bピラーがないことからリヤドアの建て付け調整に苦労したという。やはりドアまわりの剛性や車体強度に欠けてしまうのは仕方がないだろう。
ただ、軽のハイトワゴンにはドアのロック方法を工夫することで、Bピラーレスを実現しているモデルもある。軽ハイトワゴンの場合はスタイリング重視ではなく、乗降性重視でBピラーレスに需要がある。つまり、需要があればメーカーは開発もしアップデートもするわけだから、スタイリング重視のセダンの需要がなくなってしまったことが、セダンのハードトップが減少した最大の理由なのかもしれない。