ガソリン直噴エンジンを世界初で市販化したGDIエンジンとは
現在ではすっかり当たり前になった直噴エンジン。ハイブリッドカーや電気自動車が続々登場するなかで、内燃機関(ガソリンやディーゼルのエンジン)搭載車は重要な存在であり、電力不足が叫ばれる昨今では、ガソリンがいくら高騰しても存在感は決して薄まってはいない。
ご存じの方も多いかと思うが、ガソリン直噴エンジンを世界でいち早く市販化したのが三菱のGDI(ガソリン・ダイレクト・インジェクション)エンジンだ。1996年に登場した8代目ギャランと、そのステーションワゴン版の初代レグナム(1世代で絶版に)に搭載された1.8L直4 4G93型が始まりであり、1997年にはGDIのラインアップがV6にも広がり、パジェロの都市型仕様と言えるチャレンジャーにも6G74型3.5L V6 GDIエンジンを搭載。この時代の三菱は日本初のマニュアルモードATとなるINVECS-II(以下、インベックス2)をFTO(1994年)に採用するなど、意欲的な新技術が多く先見の明があった。
燃費性能だけじゃなく環境性能にもこだわったのだが……
8代目ギャランとレグナムだが、ギャランは同社のコンパクトカーであるコルトの兄貴分として1969年にデビューした。ライバルはトヨタ・コロナや日産ブルーバードなどで、ギャランは徐々にその存在感を確立。バブル期に登場した6代目は走りのグレードであったVR-4がWRC(世界ラリー選手権)などのモータースポーツで活躍したこともあって、その地位を盤石なものにした。
続く7代目ギャランは、以前から続く4ドアのギャランと5ドアのギャランスポーツ(姉妹車がエテルナとエメロード)で構成する。そしてワゴンブームの到来によって、4ドアセダンの8代目ギャランとその派生モデルであるステーションワゴンのレグナムが誕生した。この両車の特徴はガソリン直噴エンジンのGDIの搭載であり、走り派のユーザーには280psを発揮するV6ツインターボ搭載のVR-4を設定。この時代の三菱は話題に事欠かない魅力に溢れていた。
GDIエンジンの特徴はシリンダー内の気流を利用して、点火プラグ付近に燃焼可能な混合比の層(成層燃焼)を形成することで、理論空燃比ではなくシリンダー内全体として超リーンバーンを実現させたこと。この理論空燃比とは燃料がキレイに燃焼する比率の理想値がガソリン1に対して空気量14.7という理論値で、クルマから排出されるガスのバランス(環境性能)が一番良いとされている。リーンとは燃料に対して空気が多く、リッチというのは空気が少ない場合を指し、昔のドッカンターボはリッチな混合気を強制的にぶち込んで高出力化を図っていた。