時代を先取りしすぎたのかトラブル続出
GDIが求めたものは、リーンバーンによる燃費の向上だ。少ない燃料でしっかり爆発させることができれば、必要なパワーを発生させながら燃費の良いエンジンとなる。また発熱が少なければ吸入空気のポンピングロスの低減と比熱比の改善、さらに冷却損失も減らすことができるため、十分な出力と低燃費を両立することできた。
当時の資料には燃料消費がマイナス35%、出力がプラス10%、CO2排出量がマイナス35%減、NOx排出量がマイナス95%減とあり、まさに夢のエンジンと言うことができたGDI。最高出力150ps/6500rpm、最大トルク18.2kg-m/5000rpmを発揮し、1.8Lの直4ガソリンエンジンとしては十分な性能を発揮していた。
しかしGDIの市販化は少し早過ぎた。この当時のGDIは理論上であり、実際に長く乗っているうちに吸気マニホールドやシリンダー内にカーボンスラッジが多く付着し、エンジンオイルの劣化も早まり、さらにディーゼル車のような黒鉛が出るなど、本来の性能が発揮できなくなり、出力面でも排ガス面でもトラブル起こすことになってしまった。
三菱もさまざまな改善を施し、対策車にはGDI倶楽部というステッカーを貼るなどしたのだが、その後のリコール隠しなどのゴタゴタもあって、GDIエンジンは黒歴史のような結果となってしまった。現在のように電子制御が進み、複数回の燃料噴射と高圧噴射、さらに特殊形状のピストンがあればよかったのだが、時代を先取りし過ぎた結果となってしまった。
GDIの失敗がなければ名車になり得たモデル
GDIエンジンによってみそが付いてしまった8代目ギャランとレグナムだったが、4ドアセダンのギャランにはハイパフォーマンスモデルのVR-4に6A13型2.5L V6 DOHCツインターボを搭載。最高出力280ps/37.0kg-mを発揮し、5速MTと5速ATをそれぞれ設定した。ABSはもちろんランサーエボリューションにも搭載されたAYC(アクティブ・ヨー・コントロール)やASC(アクティブ・スタビリティ・コントロール)を装備している。
衝突安全ボディのRISE(ライズ)は高エネルギー吸収と高剛性キャビンを実現し、欧州の規制にも適合する性能を誇った。また国内で初めてシート組み込み式のSRSサイドエアバッグを設定するなど、先進性にあふれたスポーツセダンであった。
対してレグナムは、先代に当たる5ドアとは異なるワゴンボディ(三菱の表記はボンネットワゴン)で登場し、レガシィに勝つため三菱の技術を詰め込んだ、FFと4WDがあるスタイリッシュなステーションワゴンであった。魅力の走りを支える4輪マルチリンク式サスペンションとギャランよりも全高を30mm、全長を50mm拡大したボディを持ちながらも優れたCD値0.33をマーク。ギャラン同様に逆スラントしたノーズがスポーティでありギャランと同様にVR-4も設定された。
パワーユニットは多彩で、6A13型2.5L V6 SOHC(最高出力175ps/最大トルク23.5kg-m)、6A12型2.0L V6 SOHC(最高出力145ps/最大トルク18.5kg-m)などを搭載。トランスミッションにはお馴染みのインベックス2スポーツモード付き4速ATを組み合わせ、三菱流の仕立てによってスポーティな走りを演出した。加えて荷物を満載しても車体を水平に保つセルフレベリング機能(オプション)や、ギャラン同様の先進装備を備えており、走破性を活かした悪路走行でも困らないように大容量のウインドウウォッシャータンクを備えるなど、RVテイストも持ち合わせたステーションワゴンであった。
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三菱自慢の4WDに先進の電子デバイス、滑らか高出力と実用的なV6エンジンを搭載した8代目ギャランと初代レグナムであったが、GDIの負の話題が大きくなってしまったのは残念だった。ちなみに現在では三菱も直噴ターボエンジンを発売しており、GDI技術の経験が後世にいまも活かされていることを正直に讃えたい。