RB26DETT搭載の最終モデルは進化と革新を目指した
「人に翼を──。」第2世代GT-Rの集大成として誕生したR34スカイラインGT-R。GT-Rで初採用となる6速MTや18インチ化などトピックは多い。そして「最後の直6スカイラインGT-R」として不動の地位を築いたモデル。RB26DETT、そしてGT-Rとして熟成しただけではない。同じくらい進化と革新を目指したゆえ、今なおその高い人気を博している。販売期間はわずか3年7カ月。その濃縮された時間を振り返ろう!
(初出:GT-R Magazine161号)
【前期型】ボディのコンパクト化とパワー系を見直す
10代目のR34スカイラインは「ドライビングボディ」のキャッチコピーを掲げて、平成10(1998)年5月に登場した。最大の特徴は、さらに高みを目指すためにシェイプアップして原点回帰を図ったことである。そして8カ月後の1999年1月8日、スカイラインGT-Rとしては最後の作品となるBNR34が、東京オートサロンの会場でベールを脱いだ。ベース車に加え、最初から走りの装備を充実させたV-specを設定している。
ウエッジシェイプの強い2ドアのクーペボディは、先代のBCNR33よりコンパクト化された。ホイールベースは55mm切り詰められ、全長に至っては75mmも短い。全幅は5mm広い1,785mmだ。フロントマスクは一段とアグレッシブな表情になり、V-specはリップスポイラーやブレーキ導風板、車体の下部を覆うカーボンファイバー製のアドバンスドエアロシステム(ディフューザー)なども装備する。
インテリアはベース車に準じているが、メーターやセンタークラスターのレイアウト、シートなどを専用品とした。V-specは7項目から9項目に増やしたマルチファンクションディスプレイや3,000rpmまでの目盛りを圧縮した2段表示のタコメーターを採用している。
パワーユニットは改良型のRB26DETT型直列6気筒DOHCツインセラミックターボだ。ターボの軸受け部分をボールベアリング化すると共に、コンプレッサーも新しいC100型に変更。GT25型タービンを採用しターボ・ハウジングも設計変更した。また、最大過給圧を0.84kg/cm2から0.93kg/cm2に引き上げ、最大トルクを40.0kg-mの大台に乗せている。だが、最高出力は自主規制のために280ps/6,800rpmのままだった。
トランスミッションは、ついに6速MTに進化。ドイツのゲトラグ社と共同開発したものだ。それまでの5速MTの4速までを1速多い5速に振り分けたクロスレシオで、さらに力強い加速を引き出している。
17インチから18インチに大径化もホイールは軽量に
駆動方式はBNR32以来の電子制御トルクスプリット4WD「アテーサE-TS」だ。V-specは多板クラッチを用いて左右のトルクをスプリットコントロールする、アクティブLSD統合制御の「アテーサE-TSプロ」を採用した。標準車のリヤLSDは、自然なハンドリングを実現するために機械式ではなくヘリカルLSDとしている。
サスペンションは4輪マルチリンクを受け継いだ。ロアアームの部分はアルミ鍛造の一体型Aアームに変更されている。V-specはサスペンションもハードな味付けとした。日産が先鞭をつけた4輪操舵の「電動スーパーHICAS」は、新しい制御を加えて精度を高めている。
前モデルで17インチだったタイヤは、前後とも245/40ZR18にグレードアップされた。アルミホイールは鍛造の9Jで、重量は先代より1kg軽い9.3kgだ。ブレーキは標準車でもイタリアの名門、ブレンボ製を装着する。キャリパーは熱に強いゴールド塗装とした。
2グレード構成だが、ホモロゲーション取得のためにV-specをベースにしたN1仕様も用意された。メタルターボに換え、ピストンやエンジンブロックも専用として強化している。
BNR34は2000年1月に特別限定車を発売した。デビュー時に300台限定で発売した特殊塗装のマルチフレックスカラーを使った「ミッドナイトパープルII」のボディカラーが好評だったため、第2弾として「ミッドナイトパープルIII」のボディカラーを送り出したのである。3月までの期間限定発売だった。
【前期型DATA】
●発売 1999年1月
●当時の車両本体価格 499万8,000円
●設定ボディカラー ベイサイドブルー(TV2)/ホワイト(QM1)
ソニックシルバー(KR4)/アスリートシルバー(KV2)
ブラックパール(GV1)/アクティブレッド(AR2)
ライトニングイエロー(EV1)/ミッドナイトパープルII(LV4)
ミッドナイトパープルIII(LX0)