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最高速度200キロ!! オトナのオモチャ「スーパー3輪車」のオーナーはマンセルだった!

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2022 Courtesy of RM Sotheby's

荒法師マンセルのコレクションから出品

 2022年5月24日、F1モナコGPコースの「ポルティエ」コーナーからほど近い大型の見本市会場、グリマルディ・フォーラムを舞台に開催された「MONACO」オークションの目玉となったのは、1992年のF1ワールドチャンピオンにして、日本でも「荒法師」のニックネームとともに絶大な人気を誇った英国人レーサー、ナイジェル・マンセルCBE(2005年に叙勲)のコレクションから出品される「The Nigel Mansell Collection」だった。

 5点のロットからなるマンセル卿のコレクションには、1989年のフェラーリ「640」や、「レッド5」のカーNo.をつけた1991年のウィリアムズ・ルノーFW14など、彼自身がF1で走らせたマシンなども含まれていたのだが、それら歴戦の名車にも負けないインパクトを放っていたのが、この「iCモデューロM89」であった。マンセル卿が30年近くにわたって保有してきた個体である。

 マンセル卿は1992年イタリアGPの予選を終えたあと、iC社のデザイナー兼社主であるカルロ・ラマッティーナ本人から、このモデューロを贈られたといわれる。

 今回のオークション出品に際して添付されたドキュメント類には、モンツァ・サーキットで撮られたマンセル卿とラマッティーナ氏の2ショット写真、モデューロに乗るマンセル卿の写真も含まれる。

 またラマッティーナ氏からの手紙によると、マンセル卿がモンツァ・サーキットで運転したのはこの個体そのものであり、元々はラマッティーナが所有していたこと。そして生産第一号車「シャシーNo.001」であることなども証明されている。

 このモデューロは、1993年11月にマンセル卿へと正式に引き渡され、そののち英国ジャージーにて彼の個人コレクションに納められ、出品まではその手元に残されていた。ただし、オークションカタログ作成時の通算走行距離はわずか3185kmと、ほとんど走ってはいなかったようだ。

 そしてこのiCモデューロM89第一号車は、5月24日に行われた競売では2万1275ユーロ(邦貨換算約300万円)で、無事落札となった。

 すでにiC社は存在せず、正確な生産台数も定かではないとはいえ、いずれにしてもごく少数。さらにマーケットに売りに出される事例は数年に一回レベルである。

 したがって、いわゆる「相場価格」というものがなかなか推定しづらいクルマではあるものの、今回300万円に上った落札価格の大方は「ナイジェル・マンセル所有車」というヒストリーが占めていたものとみて間違いあるまい。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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