7年間でシリーズ合計16万台以上の大ヒット作に
市場のニーズにうまくマッチしたBMWイセッタは、二輪からの乗り換え需要とも相まってヒット作となり、BMW四輪部門の立て直しに大いに貢献した。ベースとなったイソ・イセッタの基本設計の確かさに、かねてより評価の高かったBMW謹製のエンジンを組み合わせたこのカビネンローラーは、当時欧州に登場した類似モデルの中でもとくに完成度が高く、大きな成功を収めたのである。
1955~62年にわたり生産されたBMWイセッタ250/300は、生産時期によってウインドウの配置やライトの形状など、いくつかのバリエーションが存在する。だが、冷蔵庫のように開くユニークなフロント・ドアや、デフを持たないナロートレッドの後輪をチェーンで駆動させるという基本構造は、生涯を通じて変わらなかった。その派生モデルとして、リヤのトレッドとホイールベースを拡大し、完全な4シーターとしたBMW600も存在する。
「ノイエ・クラッセ」からのBMW快進撃もイセッタあればこそ
BMWイセッタで企業としてひとまずの安定を得たBMWは、1960年には「700」、そして1962年には「ノイエ・クラッセ(=新しいクラス)」と呼ばれる新型車のラインをデビューさせる。「1500」からスタートしたノイエ・クラッセは、現代のBMWの「スポーティで上質なセダン/クーペ」というイメージの原点となったシリーズだ。そしてその後のBMWの発展は、よく知られる物語であろう。
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今回ご紹介しているミニカーは、ドイツの「プレミアム・クラシックス」というミニカー・ブランドの1/12モデル。実車の全長×全幅×全高が2355mm×1380mm×1340mmと小さいだけに、ミニカーとしては大きな1/12スケールでもなおコンパクト。しかしドイツを代表するスポーティな高級車メーカー、BMWの経営危機を救った小さなピンチヒッターは、その小さく可愛らしい姿とはうらはらに、大きな重責を果たしたのである。