内燃機関との連続性を考慮
まずスペクターが訪れたのはプロヴァンス地方にある、オートドローム・ドゥ・ミラマだ。1926年にはグランプリも開催されたこのサーキットは、現在最先端のテスト、開発施設に姿を変えており、60km以上のクローズドコースと20のテストトラック環境を持ち、敷地面積はトータルで1198エーカーにも及ぶという。
そしてその後には、プロヴァンス地方のオンロードを使用した、より日常的な使用環境に近いコンディションでのテストが継続される予定となっている。
スペクターは、ロールス・ロイス初のBEVであるだけではなく、これまでに前例のないコンピュータパワーと高度なデータ処理技術の適用が行われたモデルだ。
その新しい処理能力を活用することで、ロールス・ロイスの内燃機関自動車との連続性を確保しつつ、スペクターのディテールや洗練性、快適性は比類なきレベルにまで高まっているのだ。ロールス・ロイスのスペシャリストはそれを、「ロールス・ロイスの高解像度」と表現する。
新たなる魔法の絨毯の乗り心地
サスペンション技術も、このテストプログラムのなかで一新された。前方の路面を読み取るフラッグベアラーシステムと、前方のカーブを知らせる衛星ナビゲーションシステムからのデータを活用して、新しい一連のハードウェア・コンポーネントとスペクターの持つ高速処理能力を活用した高度な電子ロールスタビライゼーションシステムが実現。
また直線道路では、アンチロールバーを自動的に切り離す機能も与えられた。これは各ホイールが独立して作動することで、車両の片側のタイヤが路面の起伏にぶつかった時に発生する揺れを防止する役割を担う。
コーナーが迫っていることが確認されるとコンポーネントは再接続され、コーナリング時には18個のセンサーによる監視のもと、ステアリングやブレーキ、パワーデリバリー、サスペンションを最適な状態へと調整してくれる。
スペクターには新設計でかつ専用のアルミニウム製スペースフレームが採用されているが、バッテリー自体の高い剛性構造も、このフレーム構造の強化に貢献しているという。ボディ剛性は既存のモデルに対してねじり剛性で30%増。またエアロダイアミクスは、Cd値で0.25という数字が発表されている。
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スペクターのグローバル・テスト・プログラムはさらに継続され、100万kmの走行テストを行う予定とのこと。ちなみにスペクターのセールスは2023年の第4四半期からと計画されている。