2015年からスタートした人気の軽耐久の第2戦
2022年7月17日に福島県のリンクサーキットで、「東北660耐久レース」の第2戦が開催された。まずは簡潔にイベントの成り立ちについて紹介しよう。2011年に始まった軽自動車のレース「東北660選手権」は、1998年10月以降に生産されたいわゆる新規格が対象であり、エンジンも自然吸気のみでターボや旧規格は参加できない。
そのため、「ほかの軽自動車も遊べるイベントが欲しい」という声が多く寄せられていた。それに加えて軽自動車の耐久レースを主催していた仙台ハイランドが2014年に閉鎖。行き場を失ってしまったマシンをなんとか走らせたいと、東北660シリーズのひとつとして「東北660耐久レース」が2015年からスタートしたのだった。
学生だけのクラスを設け幅広い世代が参戦
当初はエビスサーキットの西コースで年1戦または2戦だったが、2022年からリンクサーキットを含めた3戦で待望のシリーズ化。従来のエビスサーキットの西コースおよび東コースと、3つのサーキットを転戦する草レースは珍しいうえ、学生だけのクラスを設けるなど独自の取り組みも多い。
リンクサーキットでの第2戦はシリーズ最長となる5時間の耐久レースで、登録できるドライバーの人数もほかのラウンドより増え5名まで。最も台数が多いのは改造範囲が制限され、タイヤもハイグリップを履けない「3クラス」で、東北660選手権の3クラスと同じ車両規定だ。
朝イチの練習走行はどのチームも車両のコンディション確認、また経験の少ないドライバーを多く周回させ予選に備える。続く公式予選ではエース級のドライバーを投入するチームが多く、総合トップは「4クラス」(3クラス以上の改造をしたNAでハイグリップタイヤが使用できる)の#311 チーム福島RISE。東北660選手権のチャンピオンやシリーズ上位の強者が揃い、今年の開幕戦でもクラス優勝と総合2位に輝いた強豪だ。激戦の3クラスは1位が#527 Z to Auto CSW自動車部、2位は#40 塩山自動車ミラ、3位が#206 APUMSC・Aチームとなり、学生クラスのポールポジションも獲得した。
トラブル発生や突然の雨などひと筋縄ではいかない
決勝はローリングスタートで火蓋が切られ、各車ともコンスタントに周回を重ねていく。しかし何といっても5時間という長丁場であり、さらにクルマにもドライバーにも過酷な季節。中盤に差しかかると車両に何かしらのトラブルが発生し、ピットインを余儀なくされるチームが出始める。
とくにリンクサーキットは最終コーナーから下り勾配のストレート、かつ1コーナーはほぼ直角に曲がるためブレーキの負担が大きい。なかでも#829 ARYレーシング チーム焼肉のL275ミラは、ブレーキまわり一式をチーム員の車両から移植することになり、復帰したものの3クラスの表彰台を巡る争いからは脱落してしまう。
そして2時間が過ぎたタイミングで雨が降り始めた。急な路面の変化でスピンやクラッシュが懸念されたが、7月に敷き直した舗装が思いのほかグリップするようで、極端にタイムを落とすマシンもなくレースは終盤戦へと突入する。
総合優勝はトップを維持したままフィニッシュした311号車
最後に逆転劇が起きたのは3クラス。予選の総合7番手からジャンプアップした#920 APUMSC・B☆藻ズがトップを快走していたが、同一ラップの#527 Z to Auto CSW自動車部が逆転に成功しそのままチェッカーを受けた。なお、#920 APUMSC・B☆藻ズは3クラスこそ2位で終えるも、学生クラスは#206 APUMSC・Aチームに7周の差を付けて優勝。3位は3月の開幕戦がエンジントラブルで最下位に沈んでしまい、載せ替えたばかりの#30 おちんぎん大好き RCG MM号が入る。
総合優勝はスタートからフィニッシュまで一度もトップを譲らず、圧倒的な強さを見せた#311 チーム福島 RISEという結果に。学生クラスの2位は#206 APUMSC・Aチーム、3位が#33 YUMC部長の威厳Racing。初心者のドライバーだけで挑んだ#66 N.U.M.C.ゾンビアルトも、何度か想定外のトラブルに見舞われるも無事にレースを終えた。
次戦は待望の復活となったエビスサーキット西コース
第3戦は2022年12月4日に2021年3月の地震による被害から復旧を遂げた、エビスサーキット西コースで2年ぶりに開催される。軽自動車なら年式や過給器の有無を問わない東北660耐久レース、興味がある人はまずサーキットへ足を運んで観戦してみてはいかがだろうか。