マンガではライバルに勝つための究極チューン車が活躍
『頭文字D』や『湾岸ミッドナイト』を筆頭に、チューニングカーが登場し、現実の世界でも大ブームを巻き起こしたマンガは少なくない。いずれも主人公が操る車両は非力だったり旧式だったりで、主人公のドライビングスキルと過激なチューニングを施すことで格上のマシンと渡り合い、下克上を果たす姿に読者はシンパシーを感じるのだろう。
とはいっても結局はフィクションの世界。いくら魔改造したところで古くローパワーなクルマが、最新鋭のスポーツカーに勝つなんてあり得るのか? しかも相手だってフルノーマルではなく、ドライバーもそれなりの手練れである。マンガの中ならではの夢物語なのか、現実でも可能なのかを考えてみたい。
本物のレース用エンジンを搭載した「豆腐屋のハチロク」
まずは『頭文字D』のトヨタ・スプリンタートレノ(AE86)。当初はごく当たり前のライトチューンだったがエンジンブローを経験し、より手強い相手と互角に戦うためグループA用のエンジンを搭載する。
AE92までの16バルブではなくAE101以降の20バルブ、作中でレブリミットは1万2000回転と明かされており、ほかにもドライサンプ化など究極の「4A-G」エンジンといっていい。加えてカーボンボンネットやアクリルウインドウによる軽量化、クロスミッションにボディ補強といったカスタムを加味すれば、峠のようなハイパワーが仇となる場合もあるコースに限れば、AE86で格上のクルマに勝つことは不可能じゃないと思われる。
もっともフルチューンの4A-Gよりはるかにパワーがある相手で、長いストレートがあればあっさりオーバーテイクされるだろうし、峠の狭いコーナーで抜き返すのは道交法を無視したとしても難しい。1台ずつ走るタイムトライアル方式ならともかく、同時にスタートして先にゴールしたほうが勝ち、というルールではやはりハイパワー車に分がある。
ポルシェとも激しいバトルを繰り広げる「悪魔のZ」
もうひとつは『湾岸ミッドナイト』の日産フェアレディZ(S30)。L28エンジンを3.1Lに排気量アップしたうえでツインターボ化、出力は時期によって500psだったり600psと違いこそあるが、いずれにせよ最高速が300km/h以上のモンスターマシンだ(写真はノーマル)。
闘いの場は首都高をはじめとするストリートの高速ステージで、相手はポルシェ911ターボやトヨタ・スープラ、アンフィニRX-7などのハイパワー車が中心となる。エンジンは扱いやすさとフラットなトルク特性を優先し、あえてパワーを抑えているとの描写が作中であったと思う。その気になれば700psや800psを絞り出せるのかもしれないが、ストリートの荒れた路面やカーブの曲率を考えれば納得できる話だ。
それは同じ2WDである限り登場するライバル車も変わらないし、フルスポット増しされたボディやドライサンプによる低重心化、軽量なカーボン製ルーフに空力を高めるアンダーパネルの装着と、基本設計の古さをカバーするべくフルチューンが施されている。ライバルたちが同程度のモディファイをしないことが前提なら、最速とは言わずとも互角に勝負することは可能かもしれない。
ただし、高度な電子制御と最先端の4WDシステムが与えられた、日産GT-R(R35)のようなマシンならより大パワーに対応できるはずであり、超高速域での操作性と安定感は、フルチューンのS30Zより上だろう。
もしも公道を全開で走るならやはり新しいクルマのほうがベスト
サーキットのようにクローズされた場所ならともかく、マンガの舞台は法定速度の一般車も多く走っている公道だ。想定外の急減速や車線変更が多いであろうシチュエーションでは、やはりドライバビリティの高い最新のスポーツカーが有利だろう。