逆にサーキット走行時では焼き入れが有効なことも
ストリートと違ってサーキット走行時には、極端にブレーキの温度が上がるのでフェードしやすい。摩材からガスが発生するフェードはじつは毎回同じ温度で起きるわけではなく、最初のフェードは早いという特徴がある。そのパッドの一番最初のフェードは低い温度で起きやすく、1回フェードしてガスが出ると、2回目にガスが発生する温度は1回目よりも少し高い温度になる。ちょっとだけ高温に強いパッドに変化するのだ。ちなみに2回目以降はフェードする温度はほぼ変わらない。
つまり、意図的に1回フェードさせると、その後はもう少し高温に強いパッドに生まれ変わるのである。
ただ、気をつけなくていけないのは、1度目はフェードさせるわけで、そのときはブレーキが相当利かなくなるので、危険が伴う。フェードの兆候を感じ取って、完全に利かなくなる手前まで温度を上げるという技が必要になる。そのため、一般ユーザーがイメージだけで真似するのは危険だ。レース用のパッドでは専用の機械であらかじめ焼き入れ工程を行うこともあるのだ。
パッドだけ新品にしたときは適切な「慣らし」を
素人が焼き入れをするのは至難の業であり、公道でもサーキットでも危険を伴う。そこでスポーツパッドでは各メーカーから、ゆるいブレーキを繰り返してから冷やすとか、当たりが出るまで一般道を走るとか、それぞれ慣らしの方法が記されているのである。
また、パッドとローターが同時に新品になればいいが、パッドだけを新品にすることもあるだろう。
ブレーキメーカー「ENDLESS」の広報・花里祐弥さんは、「パッドだけを新品にすると、ローターの凹凸に対してパッドの接触する面積が少なくなってしまいます。本来はどちらも新品にしたいところですが、そうもいかないと思いますので、そんなときはある程度ゆるめのブレーキを繰り返してもらいたいです。そうすることで徐々にパッドが摩耗し、ローターとの接触する面積が増え、本来の制動力を発揮するようになります」という。
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そういった意味でパッドを変えたときは、ブレーキを何度か繰り返すのが有効で、焼き入れという意味とはちょっと違うのだ。各メーカーではそれぞれの摩材に適した、こうした慣らしのアドバイスが説明書に書いてあるので、それにきちんと従ってもらいたい。