パワフルなエンジンと電子制御を生かすためボディも補強
それを支えるボディは全方位の衝突安全のためにさまざまなメンバーの形状を見直したほか、従来同様のアルミ合金製フェンダーに加えてルーフやバンパービームなどもアルミ合金製として軽量化を図り、高張力鋼板も採用。さらにバッテリーをトランクルームに移し、前後の重量配分の改善につなげている。スポット打点も増えており、ギャラン・フォルティスとは別のボディといっていい内容だ。
サスペンションはフロントがストラット式、リヤがマルチリンク式と特徴は見られないが、全面刷新となっている。クロスメンバーの高剛性化、ハブベアリングの大型化、リヤのトレーリングリンクとアッパー及びロアアームの支持点をピロボールブッシュとしたことで、キャンバー剛性で約56%、トー剛性で約53%も向上した。
フロントのダンパーは倒立式に、リヤのダンパーとスプリングはナックルにマウントすることで、サスペンションのレバー比を減少させ、ストロークに対する効率を高めた。リヤの非線形特性スプリングは、接地性を高めてしなやかなストローク感を取得。サスペンションが正確に動くので、電子デバイスもより性能が発揮できるようになっている。ちなみにオプションでビルシュタイン社製ダンパーとアイバッハ社製のスプリングも選べる。
専用開発のブレーキは標準でブレンボ社製が備わるが、オプションではさらに高性能なブレンボ社製の2ピース仕様が備わり、単体で1.3kgも軽量となるなど走りへのこだわりはすごい。ホイールもRSは16インチながらアルミ合金製、GSRは2種類の18インチを用意する。標準でも軽量なエンケイ社製ホイールに加えて、BBS社製を選択すると4本で約3.7kgも軽量となり、大径となったホイールの重量を相殺。第4世代となってもランエボはランエボだといえる、三菱のランエボに対する想いを感じられる内容だ。
苦しい時代に誕生したまさに不遇の名車だ
ランエボXはWRCに参戦していないことに加え、当時の三菱の企業としての状況、そして年々高まっていた環境への配慮など、さまざまな状況が相まって、複雑な時代に販売された。それでも改良幅の多い最後のファイナルエディションの名前がランサー・エボリューションXIだったら、と思ってしまう。そうであればランエボXはもっと日の当たる、話題のクルマとなったであろう。
ランエボXは、ランエボのおよそ23年の歴史で十分にランエボの名に相応しい、素晴らしいマシンだったと思っている。