ライトウェイトオープン2シーターの可能性を切り拓いた名車
1989年に登場し、メガヒットとなったユーノス・ロードスターが、日本が世界に誇る名車であることは誰もが認めることでしょう。このクルマの成功によって、それまで下火だったオープンスポーツという市場に各メーカーが注目、「壊れなくてアフォーダブルなオープンカーを作れば売れる!」ということを再発見したのです。そんなロードスターの成功によって生まれたクルマたちをピックアップしてご紹介していきます。
トヨタMR-S
2代目ロードスターとドンピシャでライバルと言えた存在が、1999年にトヨタから登場したMR-Sです。約1tという車重に、他車から流用したトルク重視エンジン、そして200万円を切るリーズナブルな価格など、さまざまな部分がロードスターと似通っていて、トヨタがガチンコでぶつけてきたライバルでした。
ロードスターと大きく異なっていたポイントは駆動方式。FRのロードスターに対してMR-Sはその名の通りMRを採用していました。これはそれまで販売されていたMR2がそうだったように、FFのパワートレインを流用し、ドライバーの背後に配置することでMRレイアウトとしていました。MRレイアウトはファントゥドライブとコスト削減の両立のために採用されたレイアウトと言えます。
サーキットなどでのラップタイムはロードスターよりも速かったものの、ロードスターというスマッシュヒットに巨人トヨタでも勝てなかったのか、はたまたロードスターにはトランクがあるといった利便性で勝てなかったのか、2007年に1代限りで生産を終了しました。
ホンダS2000
ロードスターのヒットで2シーターオープンをふたたび開発した国内メーカーは、ほかにもあります。1999年にホンダから登場したS2000も、少なからずロードスターの影響を受けた1台と言えるでしょう。FRレイアウトに50:50の前後重量配分というロードスターと近しいパッケージですが、性格は大きく異なったモデルでした。
ロードスターが軟派で緩いスポーツカーならば、S2000は硬派でストイックに走りを極めたスポーツカーという仕立てで、両車のキャラクターは大きく異なっています。剛性を求めたモノコックとハイXボーンフレーム構造を採用したボディは、実際に乗り込んでみるとS2000の方がボディサイズは大きいのに、タイトに感じてしまうほど。
そして硬派と感じる極めつけのポイントはエンジンで、最高回転9000rpmというレーシングカーのような超高回転エンジンを搭載。NAながらリッター125psを発生するハイパワーユニットでしたが、実用域のトルクは細く扱いにくいシーンも。クルマ全体としても、ロードスターに比べ素人を受け付けないという印象が強いモデルでもありました。
BMW Z3
ロードスターのメガヒットは海外メーカーにも影響を与えました。1996年にBMWから登場したZ3は、3シリーズのコンポーネントをうまく活用したFRで、1.9Lの直列4気筒エンジンのみがラインアップされていました。しかし、年々そのバリエーションを増やしていき、2.0Lの直列6気筒エンジンへ変更され、さらには3.0Lの当時新開発となる直列6気筒エンジンが追加されています。
また、ハイパフォーマンスモデルである「M」もモデルライフ途中で追加。M3と共通のエンジンを搭載したこちらは、ボディこそZ3とほぼ共通ですがMロードスターというモデル名で販売され、Z3の名称は使われていませんでした。2003年に実質的な後継モデルとなるZ4の販売が日本市場で開始され、現在まで続いていくことになるのです。
メルセデス・ベンツSLK
1996年にメルセデス・ベンツから登場したSLK。上級カブリオレのSLの弟分としてラインアップされましたが、こちらは2シーターでコンパクトにまとまっており、SLよりもスポーティな印象の強いモデルでした。
最大の特徴と言えるのが、当時珍しかった電動ハードトップの存在です。バリオルーフと名付けられたこの機構は、28秒で開閉可能とされていて、クーペの快適性とオープンの開放感を両立するメカニズムでした。ロードスターのヒットに影響を受けた車種のなかでは、比較的緩いキャラクターに仕上がったクルマと言えるモデルで、ギンギンのスポーツカーというよりは優雅に乗るのが似合うモデルと言えます。
しかし、そこにバリエーションを持たせてくるのもメルセデス・ベンツらしさと言えるポイント。当初は2.3Lのスーパーチャージャーのみでしたが、のちに3.2LモデルやスポーティなAMGチューニングがされたモデルも追加されていきました。