エンジン内部に手を入れて排気量を上げる手もアリ
さて、いよいよVR38DETT本体に手を入れるという話になる。前述したように、タービン交換時にエンジンを降ろす必要があるため、リフレッシュを兼ねるというのもありだ。浜原代表いわく、純正はコンロッドが細いのが難点の一つ。サーキットを走るのであれば強化品に交換したほうが間違いない。
「エンジン内部をやらずとも、サージタンクを交換し、純正12穴インジェクターのツイン仕様(570cc×12本)を選んでいます。これが一般的なチューニングのゴールかもしれないですね」
では、その先のいわゆる1000psオーバーはどのようなものか?
「800psを超えてくるとエンジンにも手を加える必要があります。1000psオーバーなら燃料ポンプが3つ必要になってくるのです。ノーマルからサードの295L/hに交換し、さらに同じモノを1本追加。われわれも何台か1000ps超マシンを作りましたが、これは基本じゃないと思っています。燃料ラインを別に引かなければならないし、しっかりチェックはしますがガソリンの漏れも心配になりますし。使うタービンにもよりますが、VR38を王道でチューニングしていくと950psがマックスですかね。これなら燃料ポンプは追加せずに済みます」
排気量の違いによって特性も大きく変化
エンジンまで手を入れるとなると選択肢は二つ。3.8Lのままか、排気量アップまで手を出すか。
「わたしは3.8Lのまま9000rpmまで回すほうが好きです。鍛造ピストンにH断面コンロッド、純正クランクシャフトをバランス取りしてヘッドはポート研磨しビッグバルブ仕様に。ここまでやれば完璧です。低速トルクは純正と変わらず、上はズドーンと加速。異次元の速さは最高です。ただ、サーキットなら4.3Lのほうがトルクがあっておもしろいと思います。コストも3倍くらい掛かりますが、鬼のようなトルクを味わいたいなら排気量アップですね。ほかにも4.0L仕様にするなどエンジン内部に手を入れるとなると、チューニングの選択肢が圧倒的に広がりますね」と浜原代表は語ってくれた。
VR38DETTを知り尽くすからこそ、それぞれの楽しさを上手く引き出すことができるのだ。そして何機もバラして見てきたからこそ細部の弱点に気付くこともある。
「クランクの先端にあるキーは長穴加工したほうがいいですね。第2世代GT-RのRB26DETTでは二つあったキーが、R35のVR38DETTでは一つになっています。ここが外れたら致命傷なのですが…………」
それでもVR38はRB26の進化版だと感じているそう。限界値の高さがチューナー魂に火をつける。同店ではMY20(2020年モデル)の新デモカーも投入した。TMワークスの新たな挑戦が始まる。
(この記事は2020年6月1日発売のGT-R Magazine 153号に掲載した記事を元に再編集しています)