電動化が進んでもMらしい走りを提供
──世界が電動化に進むなか、専用の電動Mモデルが登場するのかなど、未来のお話をお聞かせいただけますでしょうか?
ファン・メール社長:例えば、BMWのお客さまのなかでは3シリーズや4シリーズといった一般的な生産モデルよりも、さらににスポーティな走りと外観をご希望なさるお客さまが多くいらっしゃいます。しかしMモデルほどのハイパフォーマンスは不要という方のご要望に応えて誕生したのが、M240iやM340iといったMパフォーマンスモデルです。エンジンやトルクは通常モデルよりもパワフルに、足まわりやブレーキはMモデルと同様に、そして内装や外装もMモデルに近いスポーティさを強調しています。
それらをEVモデルで叶えたのがi4 M50。これは500ps以上あり、かなりスポーティな走りを披露します。2022年初旬にiX M60が発売され、2023年にはi7のMパフォーマンス、その次にi5を発売予定です。このように通常のEVモデルに加え、Mパフォーマンスモデルなど、ラインアップは今後増えていく予定です。EVカーであってもBMWらしさを追求していきます。
モータースポーツ活動では、BMWとして初となるハイパワーのV8ハイブリッドエンジンを搭載したLMDhマシンが、2023年1月末に開催されるデイトナ24時間耐久レースでデビューします。それと同時期となる2022年の末に、量販車にもパワフルなV8ハイブリッドエンジンを搭載したXMが発売になる予定です。いつの時代もBMW Mが追及し続けていたハイパフォーマンスカーとモータースポーツの関係は、非常に近い存在と言えます。
2022年の年末に予定しているハイパフォーマンスカーのローンチでは、M2(直6)、XM(V8ハイブリッド)、そしてiシリーズと、内燃機関搭載車からEVまでさまざまなモデルをご用意させて頂くことで、顧客のみなさまにはライフスタイルや好みに合わせて選択肢が増え、選ぶ楽しさも増えることでしょう。
モータースポーツにおけるBMW Mの未来
──BMW Mの「M」が意味するモータースポーツですが、今年はM GmbHが50周年となる記念の年にM4 GT3がレースデビュー。次にこの夏には2023年デビューとなるM4 GT4が発表となりましたね。そしてLMDhと、Mファンにはワクワクドキドキが続きます。ファン・メール社長ご自身も、7月末にイタリアで行われたLMDhのロールアウトに立ち会われていらっしゃいますが、その瞬間をどういうお気持ちで見守られたのでしょうか?
ファン・メール社長:このLMDhマシンの各所のパーツはさまざまなセクションで、ベンチマークテストを数多く行っていました。当日は初めて車両パーツが完全に組み合わせて初走行する日でしたから、エンジンのスタートボタンが押されたそのとき、そこにいた全員が息を呑んだ緊張の瞬間でした。
出走準備のため、ピットの中からピットレーンへメカニックらの手で出されて走り始めた瞬間、まさしくわが子が生まれた瞬間と同じ気持ちになり、とてもエモーショナルなひとときでした。
──ファン・メール社長はレースのライセンスをお持ちだそうですね。また、熱狂的なモータースポーツファンとしても知られていますが、このLMDhマシンも走らせてみたい、というお気持ちはありませんでしたか?
ファン・メール社長:今年のニュルブルクリンク24時間レースのサポートレースにM2 CSレーシングで参戦して、めちゃくちゃ楽しみました。もちろんこのLMDhを自らステアリングを握り、コースに出てみたい気分でいっぱいです! しかし、生まれたばかりの新生児、まだまだたくさんの手が掛かり、みんなの愛情を受けて成長しなければなりません。これから学校へ行き、成長して18歳くらいになったころに、1ラップくらい自分の手で走らせられる機会があれば嬉しいですね。
2023年1月末のデイトナのデビューまでは残り4か月ほどですから、それまでに車両をしっかりと安定させなければなりません。もしも、私がM GmbHの代表の特権で1周ドライブをさせてもらえたとして、誤って事故をしてしまったら、デイトナに出られませんからね。今は乗りたい気持ちを抑えて見守りたいと思います。
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電動化モデルの登場やモータースポーツの新たなカテゴリーへの挑戦など、50周年という節目に、新たなステージへと進むBMW M。EV化が進む欧州において、BMW Mも完全EV化となるのでしょうか? 内燃機関の未来などの話や特別なMモデルなどの話は、改めてお届けします。