手に入れるなら「今」しかないテスタロッサ
ネオクラシック・フェラーリの代表的モデル「テスタロッサ」は、高騰状態の続く現在のクラシックカー/コレクターズカー市場において、かなりポピュラーなモデルであることは間違いあるまい。
ひと頃は、最初期型の「モノスペッキオ(Mono-Specchio:シングルミラー)」なら5000万円超えあたりが当たり前。中・後期の5穴ホイールモデルでも3000万円前後の価格で取り引きされる事例が多かった。しかし、ここ1~2年はかなり市場も落ち着きを取り戻し、モノスペッキオ以外なら2000万円前後の価格設定が大方を占めているようだ。
そんな市況のもと、2022年8月の北米カリフォルニア州「モントレー・カーウィーク」における最大級のオークション、8月19〜21日まで開催されたRMサザビーズ北米本社の主導による「Monterey」に、一台のレアカラーのテスタロッサが登場することになった。
生まれた時から成功を約束されていたフェラーリとは?
1984年秋のパリ・サロンにおいて、フェラーリは「512BBi」に代わるV12ミッドシップ・ベルリネッタ「テスタロッサ」を発表した。一連の「ベルリネッタ・ボクサー」は1973年の発売から11年が経過。すでに旧態化が否めなかったことから、マラネッロでは1980年代のフェラーリを牽引する新しいスーパーカーを求めていた。そしてテスタロッサのウェッジシェイプと先進的、そしてアグレッシブなスタイリングは、マラネッロの意向を見事に反映していたといえよう。
パワーユニットとして選ばれたのは、11年前のデビューから連綿と進化を図ってきたBB系ユニットを4バルブ化した、180度V型12気筒4カムシャフト4943cc。つまり、排気量は512BB系から不変ながら、48バルブ化によって512BBiから50psアップとなる390psまで増強していた。
このボクサー12エンジンを、BB系からホイールベースを50mm延長した鋼管スペースフレームに搭載。290km/hの最高速度を標榜した。
一方、新時代のフェラーリを宣言するごとき意欲的なボディは、もちろんピニンファリーナが架装。デザインワークは同社に所属していたスタイリスト、エマヌエーレ・ニコジアが中心になって手掛けたとされる。
テスタロッサは、その気品あるルックスにふさわしい圧倒的なパフォーマンスで、登場直後から未来のコレクターズカーとなることが約束されていた。加えて、今や伝説として語られる北米のTVドラマ『マイアミバイス』でも、主人公ソニー・クロケット刑事の愛車として大活躍するなど、1980年代カルチャーを象徴するスーパーカーとして世界中のファンを魅了することになったのだ。