サファリ・ラリーの走りを体感させてくれる走行性能
スイスのバーゼルで2018年9月に催された、クルマの展示会「グランド・バーゼル」には100台以上もの出展車があった。出展車を際立たせる美術館的ともいえる展示技法をウリにして、芸術品としてのクルマの展示イベントとも言えるものになり、注目を集めていた。
来場者数を制限し(それでも4万人ほどではあるが)、商談に長けたディーラー、ブローカーたちを交えても展示されたクルマをじっくりと見られるゆとりある展示スペースを提供した。
展示物を照らし出す照明へのこだわりのもと展示されていたのは、1960年製フェラーリ250 GT SWB ベルリネッタ、1956年製ポルシェ550 1500 RS スパイダー、1968年製ランボンルギーニ・ミウラ、ミハエル・シューマッハがF1初のチャンピオンになった1994年製ベネトン-フォードB194……など錚々たるレーシング伝説マシンやヴィンテージカーで、どのクルマもまさに芸術品だった。丁寧に厳選されたクルマたちの中には、新進気鋭のコーチビルダーがワールドプレミアとして登場させ注目を集めた、ランチア「デルタ・フューチャリスタ」があった。
現代に蘇ったランチア・デルタ
このフューチャリスタは、レーシングドライバーでもあり自ら旧車コレクターでもある、エウジェニオ・アモスが立ち上げたイタリアの工房、オートモビリ・アモス(略称:AA)が作り上げたもの。オーダーメイドで請け負うその額、27万ポンド。製作には4カ月ほどを要する。当時の為替レートとは異なるが、現在の円安レートでは約4360万円(1ポンド161.55円で換算)ほどだ。コンセプトは、歴史上稀有な価値観を生み出したランチア・デルタHFインテグラーレの素晴らしさを身近に体感したい人に対してのプレゼンテーション・マシン。ベース車両としてデルタを使い、数千点の新生パーツ類で形作られているものだ。
1980年代後半の世界ラリー選手権グループA時代の始まりに、世界選手権タイトルを6年に渡り制覇し脅威を示し続けたレジェンドマシン、ランチア・デルタHF。それを手元に置いておきたいという願望を持つ熱烈なファンに対しての提言マシンである。「デルタ・フューチャリスタ」のベースマシンはデルタだという言い方はせず、「デルタ・フューチャリスタ」そのドナーカーはデルタである、という言い回しに、このマシンのコンセプトが現れているものだった。
ドナーカーという意味には単なるシャシー、エンジン提供車であるというわけではない。ランチアによって製造されたランチア・デルタHFであるということは、クルマにとってのスピリチュアルな命を支えるものを宿しているものである。そこへ最新鋭のカスタム、チューニング技法をもってして外観上はもとより、性能的にも真のパフォーマンスを備えたものとして再構築したクルマなのだ、という主張が貫かれたものだった。
第二弾のサファリスタは10台限定モデル
その第二弾として「サファリスタ」が発表され、2023~2024年にワールドプレミアを迎えるという。名前の如く世界ラリー選手権のサファリ・ラリーに挑戦し念願の勝利を勝ち取ったデルタHFインテグラーレのオートモビリ・アモス仕様現代版といったものだ。もちろん日本でも公道走行が可能な市販車カスタムカーである。
第一弾「デルタ・フューチャリスタ」はアルミのハンドメイドでのボディだったが、オーダーメイドの受注の流れもあってのことなのだろうか、次なるバリエーションとして登場した「サファリスタ」のボディは、カーボンケブラーだという。しかも限定受注10台、「デルタ・フューチャリスタ」は20台だっただけに、さらなる希少バージョンとなる。