購入から26年間ずっとカスタムを続けてきた「スープラ」
免許を取得して初めて自分で買ったクルマだったというあっくん。購入時は車検対応マフラー以外はフルノーマルだったが、少しずつカスタムを続けていくうちに、現在のスタイルになったという。このクルマの正体はトヨタ「80スープラ」。自分が思い描く理想のスーパーカー像をひたすら追い求めて完成させたマシンであった。
アブフラッグのボディキットをベースにオリジナルデザインに
「1996年5月にこの80スープラを購入しました」と話すあっくん。所有してから26年間、誰ともカブることがない自分だけのオリジナルカーとしてカスタムの道を歩み続けた。
基本的にエクステリアはワンオフだが、ベースになるエアロキットが存在している。それが、2000年に東京オートサロンに登場し、話題になったアブフラッグのコンプリートモデル「Abflug(アブフラッグ)S900」だ。当時、2mを超えるワイドボディキットはとても珍しく、その迫力は凄まじかった。そして、ロングノーズの伸びやかさを基調する大胆なスリットも印象的だった。
衝撃的なルックスを持つAbflug S900は姿は、スポーツカーとして最高にカッコ良かったが、やはり80スープラらしさが残っていた。むしろ、あえて80スープラらしさを残したデザインであった。
しかし、あっくんが自らの愛車に求めていたのは、ベースは80スープラであっても、その印象はまるで違うクルマ。
「アブフラッグ製のボディキットがスポーツカーを主張するなら、自分はスーパーカーとして認められるボディメイキングを試みよう」とあっくんは思ったそうだ。装着したAbflug S900ボディキットをベースにデザインを練り、フロントフェイス、リヤクォーター、リヤバンパー、リヤテールに至るすべてのエクステリアに大胆なワンオフ加工を加えた。
オーナー渾身のワンオフエアロなだけに、フォルム全体が自慢だが、特に注目して見てもらいたいのがリヤクォーターからテールにかけての処理だ。2ドアクーペを強調する流れるラインを作り出すために、あえてGTウイングを付けずに、リヤハッチを延長した一体式のカウルデザインを採用。テールもスーパーカーならワンテールと昔から思っていたので、アルファ ロメオ4CのテールにBMW Z4のバックランプを組み合わせて装着している。
また、リヤゲートはランボルギーニ・アヴェンタドールが大好きなので、それをイメージして作り込んだハッチを装着。ベースに使ったのはヴェイルサイド製ということだった。
こうして完成した80スープラは、フロントフェイスも独自の表情になるようにフロントバンパーを加工してヘッドライトごと覆うことで正体不明のスーパーカーとして生まれ変わった。その姿からは、まさか80スープラとは思えない姿のマシンに仕上がっている。
2JZ-GTEに換装し750馬力仕様に
じつはこの80スープラは、見た目も凄いが走りにもこだわり、エクステリア以上にスーパーチューンドな内容だった。
ベース車両はSZ-Rを搭載──つまりNAモデルだったが、エンジンの不調に伴って2JZ-GTE(ターボ)に載せ替えて、トランスミッション、ドライブシャフトといった駆動系やサスペンションも含めてRZターボ用パーツをフル移植している。
じつのところ、ハコ替え(車両ごと変える)した方が安く出来たかも知れないが、免許を取得して初めて買ったクルマということで特別な思い入れがあり、あえて費用のかかるパーツの総入れ替え作業を選んだと、あっくんは話してくれた。クルマ好きのAMW読者なら、きっとこの気持ちは十分に理解できるだろう。
エンジンについてはHKS製のビッグシングルタービンT51R kaiのフルキットを装着し、本体はヘッドチューンを施したうえでIN/EX272度のハイカムをセット。ヴェイルサイドサージタンクやビッグスロットル等を装着させ、MAXパワーは750ps、最大トルク80kg-mを発生させる。
スープラと言えばラテン語で「超えて・上に」を意味する。このあっくんが手掛けたマシンは、まさにその言葉の通り、見た目も走りも完璧に「超えた」存在の仕上げだ。誰ともカブることがない自分だけの突き抜けた異色スーパーカー。ただ佇んでいるだけでも、その凄さが伝わってくるマシンであった。