ビンテージカーのキッチンカーは存在自体が看板となる
店舗を持つよりもハードルが低いことから、飲食業界への第一歩として注目を集めている「キッチンカー」。東京都練馬区でキッチンカーのレンタルを行っている会社「鶴金社中(つるきんしゃちゅう)」では、一般的な現行車両はもちろん、ビンテージカーをベースにしたキッチンカーもレンタル可能だ。今回は、スクエアなボディと独特のシルエットが特徴のフランス商用車「シトロエンHバン」がベースのキッチンカーを紹介しよう。
ワーゲンバスと双璧をなすキッチンカーの人気ベース車
東京都練馬区でキッチンカーのレンタルを行っている鶴金社中が所有する数多くのレンタルキッチンカーの中から、ビンテージカーをべースとした珍しいキッチンカーを紹介してもらった。こちらは、独特のスタイルで走る広告塔とも言われるシトロエン「H(アッシュ)バン」だ。スクエアなボディで、フラットな床を持つHバンは古くから救急車やマイクロバス、キャンピングカーなどをボディ架装するベース車となっており、移動販売車に改造された車両も多い。
シトロエンHバンは、正式には「ティープアッシュ(type H)」と呼ばれる。1947年から1981年までほとんど基本形状を変えることなく販売されたベストセラーで、標準ボディのほか、ロングボディも用意された。Hバンがキッチンカーとして人気となったのには大きな理由がある。それは、車両そのものがFFレイアウトゆえに後部のフロア下に何も配置する必要がなく、フロアがフラットで低い位置にあるという点だ。そのため標準のボディでも室内高1.8m弱を確保でき、車内で立ったまま作業ができるのだ。
長い生産期間の中でも貴重な60年代のHバンがベース
鶴金社中ではHバンを複数台所有しているが、今回紹介してもらったのは、1964年式をベースとしたキッチンカーだ。後部のキッチンスペースを見る前にまずは運転席を見てみよう。ドアは後ろヒンジで前から開く、通常とは逆の構造となっている。これは乗り降りの際に足元が狭くならないための工夫と言われ、1960年台後半のモデルから徐々に通常のフロントヒンジに変更となるため、ビンテージモデルの象徴となっている。シートも独特で、フレームにクッション部分を敷いただけというシンプルな構造だ。いうならば小学校の椅子と防災頭巾の関係に近いといえばわかりやすいだろうか。
クラシックカーの中身は近代的なシステムキッチン
ボディの左側面にはキッチンカーとして加工された、上下に分かれて開く大きな開口部が備わる。下部分はそのままカウンターになり、上部分は日除けになるのだが、さらにそこからパネルが立ち上がりなんとこれが看板になる。販売する商品の名前を入れることもできるため、広告効果が高く人気の装備なのだとか。またリヤエンドは純正の3分割ドアとなるが、この上のみを開けることで、ちょうどカウンターと同じ高さとなるため、後部でも商品の受け渡しなどができる仕組みとなっている。
右側面にあるスライドドアを開けて後部に入って見ると、立ったまま作業ができる天井の高い空間が広がる。入って正面、左側面のハッチ部分には左右に長いカウンターがあり、その下は水タンクを設置。後部ハッチの内側にはステンレスの大きなカウンターがあり、右側にはシンクが備わる。さらに前方には冷蔵庫と、限られたスペースにひと通りの装備が設置されていることがわかる。鶴金社中では販売する商品に合わせてコンロやフライヤーなどを追加で設置するなどのカスタマイズが可能だ。
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ワーゲンバスと双璧をなすビンテージ商用車の人気モデル、シトロエンHバンは、多くのキッチンカーが集まるイベントなどではクルマが目立つため集客効果もバツグン。車両自体を見つけることも困難なレア車なので、興味のある飲食店関係者は、一度レンタルで使用してみるのもアリかもしれない。