「音楽はクルマを停めて聞く」ハイエンド・カーオーディオの世界
カーオーディオ専門イベントのレポートを読んだりして、「最上級のカーオーディオって、一体いくらかかるんだろう?」と気になる人もいることだろう。そこで名だたるカーオーディオ専門店に、最上級のハイエンド・カーオーディオを付けると果たしてどのくらいの価格帯でできるのかを聞いてみた。
オーディオ機器だけでも300万円~350万円
まず関西代表、いや日本を代表するカーオーディオ・ショップのひとつと言っていい、大阪の「AVカンサイ」の場合。代表の岩元さんによると「ハイエンドだとオーディオ機器代金が300万円程度から」だという。
これだけでもそこそこのクルマが買える金額だが、カーオーディオの場合、代金はそれだけには留まらない。というのも、スピーカーが箱(エンクロージャー)に組み込まれた状態で売られているホームオーディオと違い、カーオーディオ用のスピーカーのほとんどはユニット単体。それをクルマに取り付ける(インストール)作業が必要であり、音楽を快適に聴く環境を整えるために制振だったり吸音であったり、場合によっては静音化などの作業も必要になる。
さらにカーオーディオの場合、ケーブルを引き回す長さや量がホームオーディオよりも多く、最上級のものになると優に100万円は超える。これらを加えていくと、オーディオ機器代金の倍まではいかないものの、限りなくそれに近い金額になることを覚えておきたい。
ケーブル代とインストール費用も当然かなりの金額に
ちなみに取り付け費用だが、スピーカーを例にあげるとハイエンドの場合、最低でもツィーター、ミッドレンジ、ウーファー、サブウーファーで構成する4ウェイ・システムが多く、ステレオなので8箇所の取り付けが発生する。それだけでも最低1週間かかるためおおよそ50万円くらい。凝った取り付けを行うと、100万円は超えてくるという。そして制振はドアだけであれば4万円、ドアの吸音処理を加えるとほかに10万円。さらに全体の静音化を施すとプラス20万円ほどかかるとのこと。なお、驚いたことに、ハイエンド・カーオーディオのオーナーの中には、本気で音楽を楽しむときにはクルマを停めて聴くという人も一定数いるそうで、そんな人は静音化処理は不要だろう。
AVカンサイのデモカーであるBMW M3は、オーディオの商品価格が300万円程度。ケーブルは岩元さん個人としては「そこそこでいい」という考えから80万円程度、取り付けが50万円程度で、430万~450万円で完成するという。同じクルマで同じ仕様の場合、音質も確実にデモカーと同程度に仕上げることが可能とのことだ。
そしてカーオーディオの場合、機器や取り付けと並んで重要な調整だが、これはプライスレス。つまり無料だ。しかも何回繰り返して調整を行っても無料だという。カーオーディオはホームオーディオと違ってタイムアライメントなどのデジタル調整機能が発達しており、運転席に的を絞ったオンリーワンの調整ができるのだが、それが無料ということである。
時間もたっぷりかかる職人技の世界、一度はデモカーで試聴してみよう
もうひとつ、東北を代表する岩手県の「サウンド・フリークス」にも聞いてみた。デモカーのBMW X4の場合、機器代金が安定化電源まで含めて約350万円。ケーブル代が電源、スピーカー、RCAの合計で約100万円。これはフロント・スピーカーが6ウェイで1chあたり6mのスピーカーケーブルを使用しているのが要因で、1mあたり約4000円だとしてもスピーカーケーブルだけで25万円くらいかかっているのが大きい。さらにRCAケーブルはワイヤーワールド、サエク、ティグロン、BAラボなど各チャンネルで違うメーカーを使用し、これだけで40~50万円かかっているという。
取り付け費用はデモカーなので何も考えていないとのことだったが、ドアをほぼエンクロージャーにしているので、費用はかさむという。その分、デッドニング(制振&静音)の工程が省略できるのだが、50万円以上はかかる。そして一番問題なのが時間。このクラスのクルマを仕上げるには1カ月では終わらないため、デモカーであれば実現できるが一般ユーザーのクルマの場合、場合によっては実現できないかもとのことだ。
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おさらいしておくと、両方のショップとも、ハイエンド・カーオーディオを実現するならオーディオ機器代金が300万~350万円程度。そしてケーブル代金や取り付け費用を含めるとおよそオーディオ代金の倍くらいかかる。つまり600万〜700万円。なかなか良いクルマが買える金額だ。
そのようなお金をかけてでもハイエンド・カーオーディオが欲しいというユーザーは一定数おり、ある程度しか調整できないホームオーディオと違って0.1dBステップで多様な調整ができるカーオーディオは、運転席でとっておきの音が楽しめるスペシャルな空間を作り出せる。そんな進化を遂げたハイエンド・カーオーディオをぜひ体験してもらいたい。