新車当時の「チェア&フレア」のオプションプライスとは
今回RMサザビーズ「Monteley」オークションに出品されたディーノ246GTSは、1973年型のアメリカ仕様車。シャシーナンバーは#06462である。
246GTSフェラーリの歴史家、マルセル・マッシーニ氏のレポートによれば、この米国仕様のディーノは「ロッソ・キアロ」ベージュ・コノリー・レザー・インテリアで、1973年12月19日に完成したとのこと。
ネバダ州リノの「ビル・ハーラー・モダン・クラシック・モーターズ」を経て、カリフォルニア州のハリウッド・スポーツ・カーズに渡り、1974年5月に同州内の愛好家が新車として購入した。
付属のセールスインボイスに記されるように、工場出荷時には「フレアホイールウェル(675ドルのオプション)」、「デイトナシート(110ドルのオプション)」がともに装備された、いわゆる「チェア&フレア」仕様である。さらにパワーウインドウやエアコン、レザーインテリアなど、工場出荷時の装備はもとより充実していた。
最初のオーナーは、この246GTSを1998年まで保有した。そののち、2003年にカリフォルニア州の有名なフェラーリ愛好家がオーナーとなるとともに、フルレストアを敢行。新車として作られた当時の輝きを取り戻した。
そして2004年初頭に全面的なレストアが完了すると、アメリカ各地のカーショーに送り込まれる。2004年1月に開催された「第13回パームビーチ・カヴァリーノ・クラシック」にて「フェラーリ・クラブ・オブ・アメリカ(FCA)金賞」を受賞したのを皮切りに、翌年の同イベントではプラチナ賞と「コッパ・デッラ・マッキナ」賞を獲得している。
そののち、アメリカ各州の複数のオーナーのもとでも大切に維持されてきたのは、2022年4月に行われたオイルフィルター交換と油脂類チェックを記した請求書に至るまで、あらゆる整備記録が保管されていることでも明らかと思われよう。
今回のオークション出品に際しては、これまでのレストアと継続したメンテナンスの請求書などが付属されたほか、オリジナルの販売明細書に取扱説明書、販売用の資料、ツールキット、ディノキーホブ、トノカバーなどの付属品も充実していた。
ディーノがついに1億円オーバー!
ナンバーズマッチのエンジンとギアボックス、そして純正ペイントを用いて北米各地のコンクール審査員を唸らせるレストアが施されたこの246GTSに対して、RMサザビーズでは、昨年までの246GTS相場を思えば強気ともとれる、55万ドル~65万ドルのエスティメート(推定落札価格)を設定した。
ここで思い出されるのが、2022年5月24日の「MONACO」オークションにて53万9375ユーロ(邦貨換算約7500万円)で落札された1972年型ディーノ246GTS「チェア&フレア」仕様車である。
モナコで落札されたチェア&フレアは、フランスのスーパーモデルにして国民的女優とも称されるレティシア・カスタ氏が約11年間にわたって保有してきたという、大きな付加価値を持つ個体であった。
一方、今回のチェア&フレアは、コンディションは申し分ないとはいえ、来歴の点ではコンクール歴などが目立つ程度で、モナコの時ほどの高額落札はないかと予測していたのだ。ところが、当日の競売では入札がどんどん進み、終わってみれば80万2500ドル(邦貨換算約1億1100万円)で小槌が落とされるという結果となったのだ。
現況の円安ゆえに、われわれ日本人にはことさら衝撃的に感じてしまうのだが、ディーノGTがついに1億円を超えてしまったというインパクトは、やはり今後の国際マーケットに与える影響も小さくはないだろう。