既存オーナーが「聞いてないよ〜」と愚痴りたくなる魅力度MAXの大幅改良モデル
「女房と畳は新しいほうがいい」や「女とワインは古い方がいい」という真逆のことわざがあるように、クルマも「フルモデルチェンジ直前」と「フルモデルチェンジ直後」のどちらを買うのがいいのか問題は、クルマ好きの間で度々繰り返される究極の議論だ。
「新しいクルマにいち早く乗れば目立つことができるし、長く現行型に乗ることができるけど、初期型はマイナートラブルやリコールが起こる可能性があるし、熟成された後期型はよりいいクルマになる可能性があるしな……」というのが議論の争点だろう。仮に新型に切り替わって、すぐに大幅なテコ入れがされたクルマがあったら、熟成派から「それみたことか」と論じられるわけだ。
今回は本当にモデルチェンジしてすぐに改良された「それはないよ~」なクルマを中心に、すでに購入済みだったオーナーがガッカリとなった魅力的な後発モデルを5台紹介することにしよう。
矢継ぎ早の改良で登場3年で別物に進化した「GRスープラ」
「それはないよ~」の最たるクルマが、2019年5月、17年振りに5代目(国内では3代目)が発表された「スープラ」。トヨタのフラッグシップスポーツの復活だけでなく、スポーツモデル専用ブランドである「GR」初の専売車種であることから業界は色めき立ち、トップグレードのRZが納車延期となるなど販売台数も好調だった。ただし、2020年2月にアメリカで早くも大幅なテコ入れを発表。最上級グレードのRZは最高出力が大幅に向上(340ps→387ps)し、それに伴いボディ剛性をアップ(足まわりも当然見直し)したものだから、初期型を買ったオーナーからは「それはないよ……」という声が噴出した。
そして、2022年には多くのクルマ好きが知ってのとおり、6速MTモデルを追加。ここでも「デビュー当時にMTがあったら買ったのに……」という声が続出したのは言うまでもない。トランスミッションだけでなく、足まわりを含めて各部はさらなる最適化が図られ、わずか3年で別物と呼ぶに近いほどに進化したGRスープラ。スポーツカーなのでアップデートすることは喜ばしいことだが、初期型オーナーは買ったことを相当後悔したことに違いない。
2.4Lはとっても魅力的だけど車両本体価格が……「レヴォーグSTI Sport R」
スバル最新のプラットフォームに秀逸な電子制御可変ダンパー、多彩なドライブモードセレクト、最新のADAS(先進運転支援システム)など先進機構を備えるなど、日本市場のフラッグシップと呼ぶにふさわしい仕上がりとなった2代目「レヴォーグ」。2020年10月の登場時は、1.8L水平対向4気筒ターボ(177㎰)のみで、確か先代型の1.6Lターボと2.0Lターボを引き継ぐような話を聞いていた気がするのだが、わずか1年後に2.4L水平対向4気筒ターボ(275㎰)が登場した。
車体&装備こそベースとなった1.8LのSTI Sport&STI Sport EXと共通だが、走りの差は歴然。パワートレインもパワー/トルクに合わせて強化され、CVTは大容量型で8速のステップ変速が可能に。AWDもアクティブトルクスプリット式ではなく、電子制御センターデフを持つVTD方式に変更されている。ハイパフォーマンス派なら間違いなく2.4Lで、WRXの存在からラインアップされることは予想できたとはいえ、「同時に出してよ」というのがスバリストの本音だろう。ただし、価格は438万円~と1.8Lの同グレードで約70万円、廉価版のGTとは130万円近い差がある。性能アップと価格差を考えるとその選択は悩ましい。
突如登場した大人版コンパクト「ノート オーラ」は価格差考えても満足度は高い
コンパクトカーで「それはないよ」な代表格が日産ノートだ。現行の3代目は日産自慢のハイブリッドシステムである「e-POWER」搭載車のみの設定とし、電動化を推進する新生日産の顔、先進のコンパクトカーとして2020年11月に大々的に発表。12月の発売から1カ月で2万台以上の受注を記録するなど好調なスタートを切ったのだが、約7カ月後の2021年6月に派生モデル「ノート オーラ」が突然デビューした。このオーラはノートをベースとしながら3ナンバー化され、デザインも大人向けに大幅に手直し。エンジンは116㎰/280N·mから136㎰/30N·mへと高められ、遮音性も向上した。
15から17インチへとワイド&大径化されたタイヤと相まって操安性も段違いに高まり、内装も木目調パネルやツイード調ダッシュボード、12.3インチのナビゲーションシステムなどの専用品が奢られるなど、ノートが横に並べば見劣りするのは明らか。価格差は約40万円とコンパクトカーとして見ればかなり高額だが、装備の差を考えれば実質は20万円程度と言える。車齢が伸びている今、当初から両方選べたなら、法人などを除けばノート オーラを選択する人はもっと多かっただろう。
最新の3L V6ターボ搭載の日本を代表するスポーツセダンに回帰「スカイライン400R」
その時代における最先端技術を採用する「技術の日産」の象徴として進化し続けてきたスカイライン。現行型の13代目は当初世界初のステアバイワイヤ(電子信号でタイヤを操作する)システムという新技術を備え、FRのハイパフォーマンスハイブリッド、メルセデス・ベンツとのアライアンスから採用された2.0L直4ターボのラインアップなど、主要マーケットである北米と同じプレミアムセダンを目指していた。そのため、フーガとの棲み分けが曖昧となり、本来のキャラクターであるスポーツセダンだけでなく、存在意義も薄れつつあったのだが、2019年7月のマイナーチェンジでやや方向転換。
先進性はハイブリッドモデル(プロパイロット2.0搭載)に任せ、ガソリン車は圧倒的なレスポンスが自慢である新開発の3.0L V6ターボを搭載し、基本的なメカニズムはそのままにスポーツ方向に振り切った。とくにガソリン車の最上級として設定された400Rは405㎰/475N·mのパワーと専用のハードウエアを組み合わせることで、欧州セダンに負けないパフォーマンスで肩を並べた。「最初から用意してくれていれば」と悔しがる前期型オーナーは少なくないはずだ。
見た目だけじゃなく中身も大改良! 走りも質感も進化した後期型「デリカD:5」
クロスカントリー・ミニバンとしてワン&オンリーな地位を築き、登場から16年が経過した今もコンスタントに売れ続けている三菱のデリカD:5。その長い歴史のなかで、ファンから一目置かれているのが、2019年のビッグマイナーチェンジモデルだ。コワモテなフロントフェイスは好みが分かれるが、変わったのは外観だけでなく、パワートレインにもシャシーにも手が入れられ、中身もかなり洗練されている。2.3L直4ディーゼルターボは型式こそ同じだが50%が新設計となり、最大トルクを20Ǹ·m向上させながら振動も低減。
トランスミッションは6速ATから8速ATへとワイドレンジになり、ヨーレイトフィードバック制御が追加され、扱いやすさと燃費向上を果たしている。外観とともに大きく変わったのがダッシュボードで、絶壁で古典的なスタイルから、ソフトパットを多用した水平基調のデザインへと一新。ナビ画面も10.1インチとミニバンとしては標準的な水準まで拡大して一気に現代風になるなど、フルモデルチェンジしたかのような仕上がり。デビューから13年が経過した時点での変更なので「待っていれば」というタイミングではないが、その差は歴然なのだ。
今の社会情勢を考えると気に入った新車は改良の不安よりも即購入がベストだ
スカイラインやデリカD:5のように発売開始からロングスパン(時間が経過している)車種ならば、大幅なテコ入れがあっても「仕方ないか」と思えるが、スープラやノートのように発売から1年経たずに大幅な改良がされた場合、市場価値的にも乗り換えするのは難しく「どうにも納得できない」ものだ。
ただ、社会情勢や半導体不足などの理由で納期が遅れており、スポーツカーなどはデビュー後すぐに受注停止になることもあるため、早めにオーダーしないと手に入らない可能性も……。現在の状況を考えると即改良のリスクはあるものの、気に入ったクルマがあるなら即契約するほうがいいかもしれない。