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【1300km弾丸インプレ】日産「アリア」の実電費とは? 長距離試乗してわかった充電の現実と乗り心地をお教えします

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TEXT: 斎藤慎輔(SAITO Shinsuke)  PHOTO: 斎藤慎輔

最新の100kW急速充電器が山形にも上陸していた

 山形市内に宿泊した翌日は、天童市を抜けて酒田に向かうことにした。ちょっとしたハンドリングチェックも兼ねて、空気も澄んだ天童高原に向かう。良いワインディングで知れるのは、前輪駆動のEVにとっては、モーターのレスポンスの良さが必ずしもプラスにならない点だ。上り坂でのタイトコーナーでは、前輪接地荷重が抜けていることもあり、コーナーからの脱出に向けて加速を意図したアクセルの踏み込みと同時に一瞬空転して、その瞬間にアンダーステアに転じてしまう。

 当然、直後にトラクションコントロールと出力制御に入り、ドライバーもアクセルを戻すことになるので、前輪に荷重が戻ると同時に姿勢も戻るが、そこはドライバーの意図をくみ取りつつもう少し繊細なデバイス介入ができないかと思うのだった。

 せっかくなので、少し足を伸ばして日本海側の酒田市を目指すことにする。昨晩に88%まで充電できていただけに、バッテリー容量をまったく気にせず余裕で酒田港に着いて、せっかくなので軽く魚料理などを食べ、さらっと観光して寒河江市に戻り1泊。本来、ここの温泉宿に備えられた普通充電器で充電をしておこうと考えていたのだが、これが先客ありで使えなかった。これもまたEV充電あるある、である。

 ということで、翌朝、宿からもほど近い山形日産寒河江店に向かう。新しい店舗だなと思ったら、充電器も最新の100kW仕様が備えられていた。アリアと見て笑顔で迎えてくれたセールスレディは「ウチにアリアがいらしたのはまだ2台目です」と話してくれた。綺麗なショールーム内でコーヒーとお茶菓子をいただいている間に、バッテリー残量35%・走行可能距離175kmの状態から30分充電で88%・440kmまで回復したのだった。

1300kmの平均電費は6.7km/kWhときわめて優秀

 今回は、時間に余裕をもったひとり旅的な動きとしていたのと、現実的な充電インフラを知る目的もあったので、あちこち充電に寄ってはみたが、現実的にはやはり無駄な時間を費やす必要が生じてしまう。

 車両の駆動用バッテリーが大きくなればなるほど、満充電時の航続距離は伸びても、それに応じた大出力の急速充電器が必要になる。テスラや一部輸入EVでは大出力充電設備を整備しているが、結局、目的地やルートから離れていれば、わざわざ「寄る」ということになる。そうした課題は、まだまだしばらく付いて回ることになるのだろう。

 結局、寒河江からは赤湯温泉などいくつか寄り道しながら戻ってきたので、往復の移動距離は約1100km。帰路で立ち寄ってみたショッピングモールの急速充電器は故障で使えなかったなど、思ったタイミングで充電ができないことも強く印象に残ることになった。その間、都内に戻るまでに、20kWといった低出力の充電器の使用も含めて、充電回数は7回。その後の走行も含めると都合1週間で計約1300km走らせて、さらに一度急速充電をしたが、最後まで充電への煩わしい思いは付いて回った。

 ただし当たり前のことだが、現状でEVに乗るにあたって、家に充電環境が整っていることで、かなりの部分が解決される。一方で長距離移動となると、行きはよいよいで、帰りがこわいかどうかは充電インフラ次第で、かつそれが待ち時間など含めて円滑に使用できるかが課題となる。

* * *

 日産アリアB6に関していえば、例の乗り心地は次第に少し慣れてはきた。それでも、早い段階で改善を望みたい思いに変わりはなかった。それ以外は走りの面から使い勝手まで良くできていることも知れたし、電費は今回の1300km走行の平均で6.7km/kWhとなかなかのもの。高効率空調のおかげもあり、エアコンをつねに作動させた走行でも、WLTCによる走行距離の9割超えは立派だ。実電費が、掛け値なしに優れていることが知れたのは大きな収穫だったが、BEVでの長距離移動では、時間にも心にも余裕が必要であることを再認識することになった。

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