パジェロ譲りの4WD性能を継承し続けたデリカ3兄弟の実力
デビューから54年。世代を重ねるごとに存在感を増し、今や三菱自動車を代表する車種にまで成長した「デリカ」。近年のアウトドアブームはもちろん、自動車業界でのSUVの台頭もあいまって、その人気はまだまだスケールアップしそうな勢いだ。半世紀経っても衰えないその魅力は一体どこにあるのか? デリカ大躍進の秘密を探っていってみたい。
スターワゴンが先鞭をつけたリアルオフローダー・ミニバンとしての存在意義
デリカのヒストリーは1968年、小型トラックとしてスタートした。翌年にはワンボックスボディのバンが設定されるが、最初はあくまで商用車(荷物を運ぶためクルマ)だった。しかし’70年代の早い時期から9人乗車の「デリカコーチ」、ポップアップルーフを備えた「デリカキャンピング」などが登場。まるで今のトレンドを見据えたかのようなラインアップを誇っていたのだ。
そして1979年にデリカは2代目にバトンタッチ。スクエアなフォルムは4ナンバー車と5ナンバー車の2本立てとなる。当時のレジャーブームやファミリー指向の高まりもあって、デリカを筆頭に他社のワンボックス車もヒットを記録していくが、デリカがデリカとしての方向性を決定付けたのは1982年、5ナンバーワゴン登録だった「スターワゴン」に4WDモデルが追加されたことだ。なんとシャシーに、当時の大ヒットした初代パジェロ譲りの本格的な4WDシステムを採用してしまったのだ。
もちろん他社のワンボックス車にも4WDモデルはあったのだが、それは冬の凍結路や悪天候時の走行安定性に重きを置いたもの。しかしデリカのそれは、副変速機(ローレンジ)までが用意され、しかも大径タイヤを装着して十分なロードクリアランスも確保した。つまりデリカ・スターワゴンは、パジェロと同等の悪路走破性をも実現したリアル・オフローダーでもあった。そしてこのキャラクターは、のちに発表される「デリカ・スペースギア」、「デリカD:5」にもしっかり受け継がれていく。
いわれのないレッテルを貼られるもアウトドア派ユーザーから確固たる信頼性を獲得
1994年に登場したスペースギアは、鼻先を伸ばしたミニバンスタイルを採用しながら、当時大ヒット中だった2代目パジェロのプラットフォームを流用。このためボディの重心が極端に高く、自動車業界からは『走らせると危険なクルマ』などと揶揄されたが、実際はアウトドア指向の強いユーザーから支持されることになった。スーパーセレクト4WDという、当時最先端の4駆システムが搭載されていたのも、スペースギアの魅力のひとつだった。
そして現代的なクルマとして洗練されながらも、デリカのDNAをさらに昇華させたのが、現行型のD:5だ。乗用車的な乗り味、快適性、高い室内ユーティリティ性、大容量の積載性と、強力なライバルがひしめくミニバン市場に、真っ向から勝負を仕掛けていった印象だ。
ミニバンなのにオフロードを得意とする二刀流ぶりで大ブレイク
ただし忘れてならないのは、歴代デリカが培ってきた悪路性能もしっかり確保したということ。ベースはパジェロから本格SUVの「アウトランダー」になり、四輪独立式サスペンションや前輪駆動ベースの電子制御式式4WDが採用されたが、大径タイヤ(225/55R18)の装着で最低地上高や対地アングルは通常のミニバンではありえない数値に。また4WDシステムも2WDや4WDロックモードを備えるなど、まさにその走りはSUVそのものだ。
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本格的なミニバンでありながらオフロードでも頼りになる、いわば二刀流。大リーグの大谷選手がそうであるように、これでデリカ人気が盛り上がらないはずがない。ユーザーの間では盛んにカスタムも行われ、その魅力も高めている。普通のミニバンならローダウン/エアロパーツ/大口径ホイールとなるところだが、リフトアップ/ガードバー/オフロードタイヤとなるところがデリカらしさ。
またSNSでつながったユーザー同士のオフラインミーティングも毎週のようにどこかで行われている。クルマの機動性や機能性が広がり、アウトドアやドライブのメニューも充実。なにより人とのつながりも広げてくれる希有なクルマでもある。オーナーたちは異口同音にデリカD:5を「人生の楽しさを広げてくれるクルマ」と評するが、まさに的を射たデリカD:5への褒め言葉と言えそうだ。