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【木更津がマイアミになった日】3年ぶりの開催となった国土交通大臣杯「POWER BOAT RACE JAPAN GRANDPRIX」が東京湾にやってきた!

今大会「実力ナンバーワン」と言われる「KE RACING」のボート

念願の東京湾での初開催!

 2022年7月23日(土)~24日(日)、真夏日の東京湾内千葉県木更津沖で「POWER BOAT RACE JAPAN GRANDPRIX」が3年ぶりに開催された。かつては熱海や銚子、徳島、木曽川、三河湾などで開催されていたパワーボートレースGPの歴史は古い。しかししばらく衰退状況にあったが「日本パワーボート協会」の発足以来、地道な活動を積み重ね2018年には「日本グランプリパワーボートレースin小豆島」、さらに「芦ノ湖グリーンカップモーターボートレース」が復活開催されていた。

スーパーカーにヘリなど、まるでマイアミのようなシチュエーション

 2020年~2021年はコロナ禍の自粛で小豆島レースは中止となったが、長年の夢であった東京湾内でのレース開催を目指し木更津漁業組合や木更津市と協議を重ね、2022年初めて東京湾内アクアライン周辺海域でのレースコース設定がなされた。そして3年ぶりのレース開催にこぎつけ、念願の東京湾内での初開催となった。

 また、アメリカでのモーターレーシングやパワーボートレーシングの先駆者BENIHANAのロッキー青木さん没後初の国内オフショアレースとなり、「ロッキー青木メモリアルレース」のサブタイトルも付けられ、長男ケビン青木氏も来日。

 後援は国土交通省、木更津市、公益財団法人マリンスポーツ財団。漁場や船舶航路、周辺海域の安全を最優先にしたコース設定がなされ、金田漁港内はパドックに、陸上スペースには観覧席、アトラクションスペース、グッズ販売やキッチンカーのスペースも用意された。

 初開催のヒストリックカーの展示にも力が入っている。1968年日本GPにエントリーした瀧レーシングの「ローラT70MkIII」がSAMS RACING TEAMから出展されていた。チームTAISANからはロッキー青木さんの乗った「ダッジバイパー」や「BRE DATSUN510」も展示された。このほか、ポルシェ「カレラGT」、ランボルギーニ「ミウラ」、「KPGC10スカイラインGTR」等マニアックな車両が展示され、パワーボートレーシングとモータースポーツの関連性を大切にしたイベントとなっている。ヘリコプターの離発着やブガッティ「ヴェイロン」が何気なく現れたりと、華やかさはまるでマイアミを思わせる。

 メインレースは1300m+800mの長方形をした1周4.2kmのコースでの1時間耐久オフショアレース、Aコース(Ⅴ850V3000~OFF4、OFF2~オープンクラス)25艇余。1周1.8kmの15周耐久レースBコース15艇、550クラス15艇が参加。

 7月23日、24日のレース間にはフライボート、JETスキーのデモンストレーションなども開催された。主催の「日本パワーボート協会」の会長はKEレーシングの小嶋松久氏。

 小嶋氏の経歴を簡単に紹介しておくと、氏はモトクロスライダーに始まり、1970年にKEエンジニアリング設立後のフォーミュラでのレーシング活動は目覚ましい。国産初のF1マシンKE007・009の話題や逸話に事欠かない方である。その後1978年には、マイアミでの全米パワーボートレースに参戦。日本国内のオフショアレースでは優勝回数15回の偉業を誇る小嶋氏のリーダーシップが、国内でのパワーボートレーシングの発展に寄与していることは間違いない。

コンディション波浪、熱き海上バトルの幕が切って落とされた!

 本戦の日曜日は朝から晴天、気温はうなぎのぼりの真夏日。お昼前には気温33度、南西風6m、海域はチョッピーな波に風波が重なりフラットな平水域とはならない。コンデション波浪。

 午前11時のFORMULA‐550レースが1周1.8kmのサーキットコース15周で行われた。参加12艇、コンディションイエローで13週に短縮。KEレーシングの後藤翔太選手が優勝した。

 午後1時にはメインレースのオープンクラス1時間耐久レースが始まる。観覧艇には乗らず、陸上からの観戦。離れてはいるがその迫力はエンジン音と白い波頭の飾波が舞いあがり興奮を伝えてくる。

 V850/1艇、V3000/6艇、OFF-4/2艇、OFF-2/7艇、OFF-OPEN/3艇の19艇が混走、中でもずば抜けて速い艇がいる。KEレーシングのゼッケン1、スロットルマンWillam Moore、ドライバー飯塚詩博。カタマランMTI40。コーナーリングを終えての爆発的な立ち上がり速度、コース上は他艇が巻き起こした波に自然の波が重なる。その中でラインを選び走りこむ。

 ボートのステアリングはドライバーが担い、重要なのはスロットルを預かるスロットルマンだ。エンジンのトルク、パワーを駆動に伝える繊細な作業である。クルマは足でアクセルとブレーキ、手はステアリングとシフトに。ボートは手でステアリングとスロットルを管理する。当然、アクセルワークの繊細さが勝敗を左右する。ボートレースではステアリング担当とスロットル担当の2人の共同作業だ。

 そしてじつは、スロットルマンがドライバーより重要なのだ。「あのボートのスロットマンは誰だ?」の世界が展開する。KEレーシングゼッケン1。スペックを見る。エンジンはスターリング8.2L×2、16400cc MAX6800rpm、800Hp。ドライブMCM6型ドライサンプ。トップスピード142マイル(約230km)、この日レースコンデション波浪で118マイル(約190km)。見ていてもわかる猛烈な速度。

 スロットルマンWillam Moore氏は、今年の全米スーパーキャットクラスシリーズ第1戦1位、2戦2位、3戦3位と、素晴らしい実力者である。ぶっちぎりのトップランを続け、このまま優勝と思われたが、残り15分、突然第2コーナーを回った先でスローダウン、止まってしまった。これこそドラマ。リタイア理由はステアリングトラブルとのことであった。

 総合優勝艇は、OFF2リキレーシングチ―ム1ゼッケン32。27フィート(9mVハル)、エンジンはカスタムV-8レーシング仕様。500cubic 600hp+、MAX5500rpm、ドライブMCM5型、トップスピード90マイル(約145km/h)。

 2位はアサヒレーシングゼッケン69、3位は東海マリンクラブゼッケン5。ホンダ船外機マルチ搭載のチームコルトも善戦していた。

 ちなみに、国内でのパワーボートレースでOFF-2クラスが総合優勝したのは初めてのこと。運輸大臣杯が手渡された。

 まだまだ知られないBOAT RACE JAPAN GRANDPRIX、熱い戦いに興奮冷めやらない。2022年夏の東京湾がマイアミになった1日であった。

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