レースで活躍したフェラーリBBとは?
昨今の国際クラシックカー・マーケットでは、積年のライバル、ランボルギーニ「カウンタック」の相場価格が急騰から高止まり状態にあるのに対して、フェラーリBB、特に「512 BB」と「512 BBi」は、かなりリーズナブルな価格で取り引きされているようだ。
しかし宿敵カウンタックにはなくて、BBだけに存在するものがある。それはル・マンなどの世界選手権を闘ったレースヒストリーを持つレーシングモデル。それらのモデルは極めてアイコニックで、しかも超レアであるがゆえに、もしも国際マーケットに売りに出されることがあれば、億単位の価格で取り引きされるのが近年の通例となっている。
そんな状況のもと、2022年8月下旬にアメリカ・カリフォルニア州モントレーで開催されたRMサザビーズ「Monterey」オークションでは、希少なフェラーリ「512 BB/LM」が出品。世界中のフェラーリ愛好家やクラシック・レーシングカー愛好家の間で、大きな話題を巻き起こした。
エンツォ・フェラーリが承認したレーシングモデル
1976年、フェラーリ「ベルリネッタ・ボクサー」が初代にあたる「365 GT4 BB」から「512 BB」に発展した直後から、レースにおける新型BBのポテンシャルについて、様々な憶測が飛び交うようになっていた。そこでエンツォ翁は、1978年のル・マン24時間レースに出場する4台を承認、「512 BB/LM」と名づける。5Lの180度V12エンジンにはさらなるチューンアップが施される一方、車体重量を減量。チンスポイラーと大型リヤウイングを装着して、ダウンフォースを向上させた。
ところがデビュー年のル・マンでは、512 BBのトランスアクスルは365時代からトルクを増したエンジンに対応できず、4台のリタイアを余儀なくされてしまう。
しかし顧客であるプライベーターたちは、フェラーリがさらなる開発を継続させるに足る興味を示していた。こうして誕生したBB/LMの第2弾は、ルーカス社製のフューエルインジェクションを採用。出力を480psに向上させるとともに、中速域のトルクも増強させることに成功した。
さらに、懸案のトランスアクスル強化、油冷式ラジエーターの追加、ブレーキやサスペンションの改良などが行われた。重量は約1075kgに抑えられ、改良されたシャシーにはピニンファリーナが風洞実験によって開発した新しいボディカウル(通称「シルエット」)が組み合わされることになった。
新生512 BB/LMは北米IMSA選手権のレギュレーションにしたがって製作されたこともあって、活躍の舞台は主にアメリカ大陸。1979年のデイトナ24時間レースでは、ルイジ・キネッティ率いるNARTを筆頭に3台がデビューした。
また、車名の由来となっているル・マン24時間レースでは、1980年に総合10位。翌年には5位入賞を果たした。512 BB/LMの生産台数は29台と少ないものの、1980年代半ばまで様々なサーキットでプライベーターたちに愛用され、数シーズンにわたって満足すべき競争力を維持したのだ。