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ついに6億円オーバー! フェラーリ「288GTO」はもはや別格扱い! スペチアーレの高騰で予想されるオークション動向とは

「F40」や「F50」へと続くスペチアーレの源流と呼べる「288 GTO」

オークションのバロメーター「スペチアーレ」

 2022年8月中旬に北米カリフォルニア州モントレー半島一円で開催された「モントレー・カーウィーク」における最大規模のオークション、RMサザビーズ「Monterey(モントレー)」では、昨今のクラシックカー/コレクターズカー・マーケットの高騰ぶりを示すように、高価格の落札劇が続々と展開された。

 なかでも、2010年代中盤以降には市場全体の市況を図るバロメーター的存在ともなっているフェラーリ「スペチアーレ」モデルたちの高価落札は、すでに世界のメディアでも報じられているようだ。今回はその中でも注目すべき1台、スペチアーレの開祖たる「288 GTO」のレビュー(事後レポート)をお届けしよう。

フェラーリ製「スペチアーレ」の開祖にして「パイパーカー」の先駆け

 フェラーリ288 GTOは、今や世界レベルで展開されている「ハイパーカー・ブティック」のパイオニア。フェラーリのみを見ても、記念すべき「F40」と「F50」、「エンツォ・フェラーリ」、そして今日の比類なき「ラ・フェラーリ」といった、非常に魅力的なモデルの先達と見なすことができる。

 1984年に導入されたFIAのグループBレース&ラリーホモロゲーションレギュレーションから生まれた288 GTOは、世界耐久選手権レースやWRCシリーズに参戦するため、モータースポーツへの供用を前提に作られたことでも有名。いずれの参戦も果たせなかったものの、妥協なく設計された真のスーパーカーであることは間違いない。

 発表時の正式名称では、単に「GTO」と呼ばれたこのモデルは、「308 GTB」よりもホイールベースを約20cm延長した頑丈な鋼管シャシーに、4輪独立懸架サスペンションと大型ベンチレーテッドディスクブレーキを装備。「コンペティツィオーネ基準」のハンドリングを実現した。

 縦置きミッドシップに搭載されたティーポF114B型 V8エンジンは、バンクあたりDOHC/気筒あたり4バルブで、ウェーバーマレリ製電子燃料噴射装置やIHI製ツインターボチャージャー、ベーア製デュアルインタークーラーにより400psをマーク。公称305km/hの最高速度と、停止状態から60マイルまで4.9秒という優れた加速性能をもたらした。

 ボディの主要パネルは軽量グラスファイバー製で、ボンネットとルーフはカーボンファイバーとケブラー混成。やがてスーパーカーの主流となる、カーボンファイバーボディを予感させるものだった。

 いっぽう外観は308 GTBに似ているが、フロント8インチ/リヤ10インチのホイールに合わせて前後フェンダーは柔らかなラインで拡幅。また、風洞実験の成果である大型スポイラーを前後に装着したアグレッシブなデザインとされた。くわえて、リヤフェンダーのホイール後方に3本のクーリングスロットを備えていたのは「初代グラントゥリズモ・オモロガート」である名作250 GTOへのオマージュであった。

ついに6億円越え!マーケットは再び暴騰の兆し?

 今回、RMサザビーズ「Monterey」オークションに出品されたフェラーリ288 GTOは、1985年半ばに完成したものと伝えられている。真紅の「ロッソ・コルサ(300/6)」のペイントに、黒革「ネロ(VM 8500)」インテリアを組み合わせ、ほかの288 GTOにはあまり見られない純正エアコンとパワーウインドウを装備しているという。

 カリフォルニア州ロサンゼルスのフェラーリ正規ディーラー「ハリウッド・スポーツ・カー」社が新車として輸入し、数年間は同社オーナーであるクリス・ヴァンダグリフ氏が、プライベートカーとして所有していたと言われている。

 1989年6月にジョージア州レイク・ラニア島で開催された「フェラーリ・クラブ・オブ・アメリカ(FCA)」ミーティングのコンクールに出品。クラス優勝を果たしたのち、1994年に走行距離わずか1000kmで売却された。

 その後は北米各州のオーナーのもとを渡り歩くも、その間もモントレーで開催されたFCA主催の国際フェラーリ・コンクール・デレガンスや「コンコルソ・イタリアーノ」などのコンクールでクラス賞を獲得するなど、かなり有名なGTOとされているようだ。

 そして2009年、ニューヨーク在住のコレクターが入手したこの個体は、2010年2月に「フェラーリ・クラシケ」レッドブックを獲得。マッチングナンバーの機械部品がすべて現存していることが証明された。

 2011年に現在の所有法人である「The Pinnacle Portfolio Collection」の手に渡ったのち、過去11年間にも最適なメンテナンスが施され、走行距離も最小限に抑えられながら、時おり楽しまれてきたという。

 この素晴らしくメンテナンスされたフェラーリの元祖スペチアーレは、2011年にイリノイ州シカゴのスペシャリスト「コンチネンタル・フェラーリ」によって、当時3万ドルの整備を受けたほか、今回の出品に備えてはタイミングベルト交換を含む、総合的な整備を受けたとのことである。

 このフェラーリは輝かしいコンクール歴に加えて、「オートモービル」誌の表紙や「プレイボーイ」のグラビアページでも紹介されるなど、アメリカではもっとも有名な288 GTOの1台とのこと。それだけに、RMサザビーズ北米本社と現オーナーが設定したエスティメート(推定落札価格)は、375万ドル~425万ドルという、かなり強気なものであった。

* * *

 ところが実際の競売ではビッドがどんどん進み、終わってみれば440万5000ドル(邦貨換算約6億3000万円)という、驚きの価格で落札されることになったのだ。

 円安の進む日本円換算ではことさらに驚いてしまうのも事実ながら、そもそもの落札価格自体も288 GTOでは過去最高クラスのもの。

 2010年代中盤をピークに、いったんは沈静化したかに見えたクラシックカー/コレクターズカー・マーケットが再燃していることを印象づける結果となったのである。

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