2010年:F1スターのライコネン参戦で盛り上がるなか若手オジエが優勝
三菱に続いて2008年を最後にスバルとスズキが活動を終了したことから、2009年以降のWRCは日本メーカーが不在で日本のファンには寂しい状況だった。それだけにラリー・ジャパンも盛り上がりに欠けるのでは……と不安視されていたのだが、数多くのファンが札幌に駆けつけていた。
多くのファンを惹きつけたのは、2007年のF1チャンピオン、キミ・ライコネンで、2009年のスポット的なラリー活動を経て、2010年よりシトロエン・ジュニアで本格的にWRCへチャレンジ。その吸引力は凄まじく、多くの日本人ファンがヨーロッパラウンドに駆けつけるほどの人気を誇り、F1界のスーパースターを一目見ようと、ラリー・ジャパンにも多くのギャラリーが詰めかけていた。
その期待に応えるかのように、ライコネンはデイ1を10番手でフィニッシュするとデイ2では8番手に浮上していた。残念ながらライコネンは最終日のファーストステージ、SS19でコースアウトを喫しリタイアしたが、それでも多くのファンにとって思い出に残るイベントとなったに違いない。
一方、注目のトップ争いもエキサイティングな展開だった。自社チームでシトロエンC4WRCをドライブするペター・ソルベルグがデイ1を制覇。デイ2でもペターがポジションをキープし、フォードのエース、ヒルボネンが僅差の2番手、シトロエンのセバスチャン・オジエが僅差の3番手につけていた。
しかし、デイ3で驚異的な追走劇を披露したのは、有利な出走順を確保すべく、あえてレグ2でペースダウンしていたオジエで、その戦略が功を奏し、シーズン2勝目を挙げる。デビュー当時から「ポスト・ローブ」と謳われてきた若き才能が、記念すべき6度目のラリー・ジャパンのウイナーに輝いた。そのほか、5年ぶりの優勝こそ果たせなかったが、ペターが2位で表彰台を獲得し、油圧系のトラブルで後退したヒルボネンに代わって、チームメイトのヤリ-マティ・ラトバラが3位に入賞したことも懐かしいエピソードのひとつ。
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以上、3回に分けてラリー・ジャパンを回顧してきたが、過去6大会ともに思い出が深く、ここで紹介しきれなかったトピックスも数知れず。そんなWRCの日本ラウンド、ラリー・ジャパン2022が11月11日(金)~13日(日)、12年ぶりに開催される。舞台は愛知県・岐阜県のターマックで、ハイブリッドシステムを持つ各チームのRally規定モデルがどのような名勝負を展開するのか? ひとりのラリーファンとして楽しみでならない。