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マツダ「コスモAP」は昭和の斬新スタイルだった! いま見てもカッコいい高級スペシャリティカーとは

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: 原田 了

5ナンバー枠でもおおらかなデザインは十分可能

 コスモAPのスタイリングは、基本的なシルエットとしてはファストバックの2ドア・クーペですが、Bピラーのデザイン処理が独特でした。Bピラーの幅を広げてその中に小さなウインドウを設けたもので、3枚のウインドウが並んだサイドビューは、初めて見たときからとても印象的です。

 少なくとも国産モデルには相似したデザインは見ることができません。驚くべきは、このおおらかなボディが5ナンバー枠に収まっているということ。ちなみにボディサイズは全長×全幅×全高が4630mm×1685mm×1325mmです。

 デザインする上で、とくに全幅1700mmの制限に無理があるとして昨今多くのクルマが5ナンバーに収まらなくなっていますが、このコスモAPを見ていると、それが単なる言い訳のように思えてなりません。

 これをデザインしたのは初代RX-7をデザインし、のちにマツダで初のデザイン本部長を務めた前田又三郎さん。ちなみに、2009年にマツダのデザイン本部長に就任し2010年にデザインテーマとして「魂動-Soul of Motion」を発表した前田育男さんの父親でもあります。さらに、1977年にはランドウトップを採用したコスモLが登場しています。

 これはメカニズム的には大きな変更点はありませんでしたがスタイリングが大きく変更されていました。コスモAPがファストバックの2ドア・クーペなら、こちらはノッチバックの2ドア・クーペ。ルーフとピラーのデザイン処理が独特でした。そもそもコスモLのLはLandau Top(ランドウトップ)のことで、これは馬車時代の車体形式のひとつ。

 近代的な乗用車でいうなら前席部分は通常のルーフで覆われていて、後席部分のルーフがソフトトップ(幌)になっている……いわゆる後席部分の幌のみが折りたためてオープンシーターとなる、パレード用車両に使用されるボディスタイルです。

 コスモLはそんなLandau Topをイメージしていて、BピラーとCピラーを一体式にして、その中にオペラウインドウを設け、さらにルーフの後半とB+Cピラーをレザートップ風に覆っていました。このデザイン処理で、ファストバックの2ドア・クーペとはまた違ったゴージャスさが演出されていたのです。

 プロモーションでもゴージャスさが強調されていました。イメージキャラクターにモデルの宇佐美恵子さんを起用し、しばたはつみの『マイ・ラグジュアリー・ナイト:作詞・来生えつこ/作曲・来生たかお』をCM曲に採用したところこれが大ヒット。コスモの販売の追い風になったに違いありません。

 個人的な好みの問題かもしれませんが、コスモAP/コスモLはベストスタイリングの1台です。そしてその印象を際立たせたのが、大学時代の友人のエピソードです。4年間の学生生活を終え故郷に帰ることになった友人は、最後の思い出に、と松山市内でも屈指のレストランに、当時付き合っていた彼女を夕食に誘い、食事を終えて店を出て、別れ際に「今度はコスモで迎えに来るから」と宣ったのです。

 余計に勉強したくて(?)大学に残ることになった落ちこぼれにとって、この友人のエピソードはとても輝いていたことを、まるで昨日のことのように、今もはっきりと覚えています。尤も数年後、彼から結婚の報告が届きましたが、奥さまは件の彼女ではなかったような……。

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  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • ライター。現在の愛車は、SUBARU R1、Honda GB250 クラブマン、Honda Lead 125。クルマに関わる、ありとあらゆることの探訪が趣味。1955年、岡山県倉敷市生まれ。モータースポーツ専門誌の地方通信員として高校時代にレース取材を開始。大学卒業後、就職して同誌の編集部に配属。10年間のサラリーマン生活を経て90年4月からフリーランスに。モータースポーツ関連の執筆に加え、オートキャンプからヒストリックカーイベントまで幅広く取材。現在ではAMWに、主にヒストリー関連コラムを執筆。またライフワークとなった世界中の自動車博物館歴訪を続け、様々な媒体に紹介記事を寄稿している。
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