アメリカ発祥のスタンス系
以前から日本にある「シャコタン・ツライチ」というカスタムとは少し違ったアプローチに注目が集まって久しい。いわゆる「スタンス系」と呼ばれるジャンルだ。これはひと昔前に流行ったユーロ系にも似たカスタムで、その基本にあるのが低い車高、奇抜なホイール、ワイドボディ(フェンダー叩き出し)、オールペンといった内容だ。
だが、これだけ聞くといわゆる普通のカスタムと何も変わらないと思うが、スタンス系カスタムの凄いところは、その魅せ方、やり方がド派手で奇抜な点にある。車高ひとつとっても、エアサス搭載車が多いのでタイヤがフェンダーに被るのは当たり前で、クルマの腹下が路面に着地してしまっているクルマが多いのが特徴といえるだろう。
S14シルビアが70年代のプリムスに
このスタンス系と呼ばれるカスタムの発祥は、アメリカで立ち上がった超人気サイト「STANCENATION.COM」がきっかけとされている。ここで取り上げたカスタムカーが超クールだと、世界のカーマニア達が注目、話題となり「スタンス系」という呼び名が世界中に広まった。
2022年9月4日に富士スピードウェイで開催されたイベント「A-MESSE」には、そんなクールなスタンス系のカスタムカーがたくさん集まった。広大な駐車場を埋め尽くしたカスタムカーの中から、AMW目線で特に凄かったクルマを紹介する。
もはや原型が何のクルマかわからないほどカスタムを施した、この1台の正体は日産S14「シルビア」だった。
オーナーは全国優道連合会に所属するYR-500さん。フロントは完全にシルビアの面影がないほど顔面チェンジされている。モチーフにしたのは70年代に「ダッジ・チャレンジャー」の兄弟車として登場した「プリムス・バラクーダ」だ。
独特の表情を作り出すプロジェクター仕様の丸型ヘッドライトを装着し、バンパーとグリルをオリジナルで製作。さらに、強烈なマッスルカー的イメージを強めるためにタンドラ用の極太グリルガードを追加装備しているのがポイントだ。
レスキュー用としての役割も
オーバーフェンダーはロケットバーニー製をベースに加工を加えているもので、サイドステップは日産デュアリス用を流用、リヤはあえてバンパーレス仕様でジャッキアップバーをむき出しに。さらに、追加バーをセットして牽引用の特殊装置を搭載。フロントにはウインチもマウントさせていた。
なぜこんなパーツを取り付けたのか、オーナーのYR-500さんに尋ねてみた。
「この車両はレスキューマシンを兼ねたドリフト遊びクルマとして作りました。なので、例えばコースアウトして動けなくなった仲間の車両がいたら、すぐに救助に駆けつける。そんな役割も兼ねたカスタムマシンとして手を加えたんです。だからルーフには暗くなっても作業が出来るように高照度の作業灯も取り付けています」と説明してくれた。
また、カラーリングもミリタリーテイストでとても格好良く仕上げてある。これはロシア空軍のSu-57戦闘機のカラーを、S14シルビアのボディに合わせてオールペンしたものという。ワイルドでタフなクルマであることを表現するにはピッタリのカラーリングといえる。
* * *
マッスルカーとしてワイルドに仕上がったYR-500さんのS14シルビア。スポーツカーだがオフロードカー的な要素も取り入れ、戦闘機カラーに加えてウインチ付きの極太グリルガード等もセットした奇抜なスタイルが注目度満点。このまま、映画「マッドマックス」に出てきそうなインパクトを持ったスタンス系カスタムカーとして注目すべき1台であった。