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鈴鹿60周年を記念して「グループCカー」6台が激走! もっとも快音を響かせたのは日産「NP35」だった

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: 原田 了

さまざまなエキゾーストサウンドが鈴鹿にこだました

 鈴鹿サーキットでは2015年にヒストリック・レーシングカーなどを集めたイベント、SUZUKA Sound of ENGINEを初開催。毎年のようにテーマを決めて開催を続けてきました。残念ながら新型コロナの感染拡大により、2020年からは3年連続して開催が中止されています。そのイベント名に表されているように、エキゾーストサウンドはレーシングカーの大きな魅力のひとつです。

 今回のデモランでも6台のレーシングスポーツが、それぞれ個性的なエキゾーストサウンドを響かせながら周回し、サーキットに詰めかけたファンを魅了していました。ポルシェ962Cと日産R86Vは同じ6気筒ターボですが、方やツインカム(4カム)のフラット6、もう一方はシングルカムのV6と気筒レイアウトが異なっていることから、エキゾーストサウンドも若干異なっているのが印象的です。

 その一方で、とても特徴的だった1台が4ローターREを搭載したマツダ767Bでした。デモランということでレースの実戦時ほどではありませんでしたが、甲高さでは間違いなく、天下一品でした。そしてアルゴJM19CとスパイスSE91Cは、かつてはスタンダードエンジンとしてF1GPを支えてきたフォード・コスワースDFVに端を発するDFLなど自然吸気のV8ツインカム(4カム)で、ターボとは一線を画したサウンドをまき散らしていました。

 そんななかで、もっとも印象に残ったのは日産NP35のV12サウンドでした。NP35は1993年のSWC/JSPCに向けて開発された車両でしたが、そもそも1989年のSWCではFIAが、それまでのグループCカテゴリーから車両規則を改定。エンジンを自然吸気の3.5Lとしたカテゴリー1を創設し、従来のグループCはカテゴリー2となり、最終的に1992年にはカテゴリー1に一本化したことで大きな混乱が生じることになりました。鈴鹿サーキット60周年記念イベント

 FIAとしては当時のF1GPと共通のエンジンとすることでF1GPに参入するメーカーの掘り起こしを考えたようですが、結果的には新たに名乗りを上げたメーカーはプジョー以外になく、1992年限りでシリーズも消滅してしまいました。

 ちなみに、FIAT系のアルファ ロメオがアバルト製3.5L V10エンジンを搭載したマシンを試作しましたが、これも実戦参加は叶いませんでした。日産NP35も1992年のJSPC最終戦にテスト参戦したのみで、1993年は目標としていたSWCやJSPCが開催されないこととなり、レース出場を諦めていたのです。

 そんな悲運のレーシングマシンとなったNP35ですが、1台のみが製作されて車両自体は座間市にある日産ヘリテージコレクションに収蔵されており、こうしたイベントの際にはニスモのスタッフがメンテナンスを行い、プロドライバーがドライブすることになっています。

 今回は昨年限りでSUPER GTでの活動を終了した星野一樹さん(現在もスーパー耐久などでは現役のドライバーとして活躍中ですが、あえて選手とは呼ばず、さん付けで話を続けさせてもらいます)がドライブしていました。星野一樹さんがドライブするRN35は、他の6台とは明らかに周波数帯が異なるサウンドをまき散らしながら、鈴鹿のコースを駆けまわっていました。

 久々のレーシングカードライブを楽しんだ星野一樹さんは、デモランを終えてピットに戻り、クルマから降り立った開口一番に「いやぁ、楽しかった」と嬉しそうにコメントしていました。その後IMPULのピットに戻りチーム監督(代行)の顔に戻った星野一樹さんに、改めてドライビングの感想を尋ねたところ「昔だったらパワーがあって、運転していて楽しかった。それだけの感想になったでしょうが、自分も歳とったのかな、そのクルマが開発された当時のことに思いを馳せることができるようになりましたね」と苦笑交じりに話し始めました。

 そして「あのころ、日産でどのような設計開発が行われていたとか、NISMOではどのような状況でテストが続けられていたとか、いろいろなことが頭のなかをよぎりましたね」と興味深いコメントを返してくれました。さらに「土曜日の走行のあとで、とても楽しかったとSNSにアップしたら(車両開発担当だった)水野和敏さんから『自分が作ったクルマを親子2代でドライブしてもらい、ありがとうございます』とコメントを返してもらいました」とエピソードを披露してくれました。

 実際、コースサイドで撮影していても、それが聞こえてくるとひと際わくわくさせられたV12のエキゾーストサウンドに関しては「ドライブしていてもV12の甲高いサウンドが気持ちよかったですね。やはりレースにサウンドは絶対に必要だと思います。レースは目でバトルしているのを見て、鼻でオイルの匂いをかいで、そして耳で甲高いサウンドを聞いて……。もう五感すべてで感じるからこそ面白さが実感できるのだと痛感しました。別にフォーミュラEを否定するわけではないですが、やはりエキゾーストサウンドは必要だと感じましたね」と星野一樹さんは熱く語ってくれました。

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  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • ライター。現在の愛車は、SUBARU R1、Honda GB250 クラブマン、Honda Lead 125。クルマに関わる、ありとあらゆることの探訪が趣味。1955年、岡山県倉敷市生まれ。モータースポーツ専門誌の地方通信員として高校時代にレース取材を開始。大学卒業後、就職して同誌の編集部に配属。10年間のサラリーマン生活を経て90年4月からフリーランスに。モータースポーツ関連の執筆に加え、オートキャンプからヒストリックカーイベントまで幅広く取材。現在ではAMWに、主にヒストリー関連コラムを執筆。またライフワークとなった世界中の自動車博物館歴訪を続け、様々な媒体に紹介記事を寄稿している。
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