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数十億円は下らないマクラーレン「F1」にBMW「Z1」顔があった! ヘッドライトはなぜ交換された?

10億円以上は当たり前となったマクラーレン「F1」だが、世界に1台だけの仕様となると、さらに高額であるだろう

もっとも新しいクラシックカーの1台

 フェラーリ250GTO、アルファ ロメオ8C2900、クラッシックカーの世界には、このように20世紀を代表するといってもよい名車が数多く存在するが、その中でも最も新しい1台といえるのは、マクラーレンが1992年に発表し、1994年から1998年にかけて生産した「F1」ではないだろうか。本来このF1はレースへの参入など一切考えない純粋なロードカーだったのだが、その運動性能に魅力を感じた多くのプライベーターからの依頼によって、後にレース仕様車の製作も行われている。

空調完備の倉庫で保管された個体

 総生産台数は最終的に106台を数え、その中でオンロード走行が可能なロードモデルはわずかに64台。今回RMサザビーズ社のペブルビーチ・オークションに出品されたモデルは、製造順では59番目(S/N:059)となるもの。

 ツーオーナーで現在の走行距離は1万6400マイル(約2万6240km)に至っている。それが証明されるのは、車両に新車時からの各整備の請求書が残されていたためで、ファーストオーナーのジョン・スタッドホルム氏は、まず17番目に製造されたF1(S/N:017)を購入した後、「F1 GTR 14R」も入手。そして氏の名義で購入されたF1はこのS/N:059が最後になった。

 マグネシウム・シルバーにブラックのアルカンターラとレザーを組み合わせたキャビンは、F1では最もポピュラーともいえる仕様だが、スタッドホルム氏は納車からわずか7カ月後には、MSO(マクラーレン・スペシャル・オペレーションズ)による整備を依頼。

 ハイ・ダウンフォースキットと18インチ径ホイール&タイヤが装着されたことが記録に残されている。その整備を皮切りに、2012年にS/N:059が2代目となるアメリカ在住の現オーナーの手に渡るまでの走行距離は1万6000マイル(約2万5600km)。

 いっぽう現オーナーは、それを彼の世界的なコレクションに加えると、大部分の時間は空調の効いた倉庫で保管していた。したがってRMサザビーズは、落札者には購入後のマクラーレンでの再点検を強く推奨している。もちろんこのモデルも、MSOによる万全のサポートが保証されるのは、ほかのF1ロードカーと変わるところは一切ない。

ヘッドライトはZ1ロードスターを流用

 通常のオークションとはことなり、「シールド・ビッド・オークション(Sealed bid auction)」という自分の希望する価格を他人に知られることなく入札できる特別なスタイルでオークションが進められたのは、同じF1でもこのS/N:059には他車にはない特徴があるからだった。

 それはヘッドランプのシステムで、200km/hを超えるクルージングが日常的な当時のオーナーから、ヘッドランプの暗さがクレームとして報告され、マクラーレンは急遽、既存のヘッドライト内部をBMWの「Z1ロードスター」のものと交換。さらにヘッドライトハウジングを短く改良することで、この問題を解決したのだ。

 同様の処理を施したF1ロードカーは他にはなく、したがってこの個体はワンオフの顔を持つF1ロードカーとして、さらにその価値を高めたということになる。

 48時間にわたって続けられたシールド・ビッド・オークション。このスタイルのオークションで最も難しいのは、入札相手がそれにどの程度の価値(金額)を、その商品に想定しているのかを探ることにある。

 ちなみにRMサザビーズ社では、このマクラーレンF1ロードカー以前にも、マラネロからの出荷時にホワイトのペイントが施されたエンツォ・フェラーリなどをシールド・ビッド・オークションで販売。販売価格はいずれのモデルも正式には発表されていないが、相当なプレミアムが付いたことは、まず間違いのないところだろう。

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