「GR」以前のトヨタ系ワークスコンプリートモデルでも気合いの入ったシリーズだった
2000年代初頭にトヨタの多くの車両に設定されていたコンプリートモデルである「TRDスポーツM」シリーズ。これは名前からも分かるように、トヨタワークスである「TRD」が厳選したチューニングを「モデリスタ」の手によって架装されたもので(名称はともに当時のもの)、ディーラーで購入できるチューニングモデルとなっていた。
このTRDスポーツMは、当時「セリカ」、「パッソ」、「カローラランクス」、「カローラフィールダー」、「ヴィッツ」、「bB」、「ist」に設定されていたのだが、いま狙うとすればどのモデルがオススメなのか、独断と偏見でベスト3をピックアップしてみたい。
第3位:カローラフィールダーTRDスポーツM
個人的第3位は、ステーションワゴンボディを持つ「カローラフィールダー」をベースとしたモデルだ。現在ではステーションワゴン自体がどちらかと言うと不人気ジャンルとなっており、新車で購入できるものもごくわずかとなってしまっている。
しかし、運動性能を犠牲としない低い全高かつ広いラゲッジスペースを考えるとステーションワゴン一択となるため、スポーティな走りと積載性を両立したい人には間違いなくオススメと言えるのだ。
このカローラフィールダーTRDスポーツMでは、専用の吸排気系とシリンダーヘッドによって205psを発生する「2ZZ-GE」型エンジンと専用サスペンション、ボディ補強パーツとグリルに専用エンブレムが備わるだけで、あとはベース車と全く変わらないという、「羊の皮を被った狼」的なルックスもまた魅力的。
とはいえ、多くの車両はオプション設定されていたエアロパーツやアルミホイールなどを装着しているケースが多いが、フルノーマルに近い物件が出てくれば迷わず買いと思ってしまう。
第2位:セリカTRDスポーツM
TRDスポーツMが設定された車種の中ではもっともスポーティな性格を持つ「セリカ」。それだけにTRDスポーツMの中でも屈指のチューニングが施されたモデルとなっている。
ベースとなったのは190psを発生し、専用のフロントサスペンションを持つ「SS-IIスーパーストラットパッケージ」。ほかのTRDスポーツMと同じく専用のマフラーやサスペンションが採用されているのだが、それ以外にも専用のエアロパーツやシート、ステアリング、メーターといった内装パーツまでも変更がなされていた。
さらにボディのスポット増しやフロアサイレンサーを省いて軽量化を施したほか、クイックシフトやオイルクーラーまで標準装備とする本格派だったのである。
また、イメージカラーとして専用色のブルーマイカを設定するなど、ほかのTRDスポーツMとは一線を画す力の入れようとなっており、それだけに現在でも高値安定となっているものの、状態の良いものがあればぜひ入手したい1台となっている。
第1位:パッソ TRDスポーツM
普通のお買い物グルマ、もしくは営業車というイメージが強い「パッソ」。確かにトヨタの普通車の中ではもっとも安価なモデルとなっており、特筆すべき高性能な点も全くないというのが正直なところだ。
そんな平凡なコンパクトカーをベースに生まれた「パッソTRDスポーツM」は、パッソの中ではエアロパーツやアルミホイールを標準として少しスポーティに仕立てた「レーシー」な1.3Lモデルがベース。
ノーマルより30mmダウンとなる専用サスペンションや、専用スポーツマフラー&エアフィルター、MOMO製のステアリングホイールなどを装着し、よりスポーティ度をアップさせていたのだが、最大のトピックと言えるのが、通常のパッソには存在しない5速MT仕様が用意されていた点だ(4速ATも設定)。
この5速MTは兄弟車のダイハツ「ブーン」の輸出仕様(輸出名:シリオン)に設定されていたものを流用しており、前述のセリカとは異なるベクトルでかなり気合いの入ったモデルとなっていたのである。
最高出力こそ95psと非力だが、925kgという軽量ボディに5速MTの組み合わせでスロットル全開率はかなりのもので、最近のホットモデルでは味わうことが難しい「使いきる楽しさ」を実感できる1台なのだ。