シニア世代に「歩道を走れるスクーター」
2022年9月13日(火)、パーソナルモビリティの開発と販売を手掛けるWHILL(ウィル)が新たなモデル「Model S」を東京都内で発表した。このモデルは、高齢者の免許返納後の移動手段として、電動アシスト自転車やシニアカーではなく、これまで満たせなかった年齢層のニーズを取り込み反映させた、スクータータイプの近距離モビリティとなる。
WHILLが手掛けてきた歴代プロダクトとは
WHILLは2012年に創業し、これまでにオムニホイールという特殊なタイヤを装着した「Model A」をはじめ、小径ホイールの2輪駆動で分解可能なモデルとなった「Model C/Model C2」、さらにフォールディング機構を取り入れた「Model F」というラインアップを展開してきた。そのプロダクトは、空港や病院などの一時利用、北米を中心にレンタルの短期利用、そして日常利用を前提として世界20カ国以上の国と地域で販売を展開している。
今回登場するのはその4世代目モデルとなる「Model S」である。この『S』は「スクーター」や「スムースな走り」といった、いくつもの意味があるという。
現在日本国内に、65歳以上の高齢者は3600万人を数えるが、そのうち歩きづらさを感じている層が1000万人いると言われているという。さらに65歳以上の自動車免許の自主返納者は、年間60万人で推移しているが、さらに2022年5月より一定の違反歴のある高齢者ドライバーには運転技能検査が義務化されており、本人の意思とは関係なく強制的な返納となる割合も増えていくことが予想される。
しかし、その免許返納後のクルマに変わる移動手段が少ないと感じている層も一定数いるという。というのも、その受け皿になるはずの電動アシスト自転車は、バランスが取りにくく体力的にも運転が厳しいという点が挙げられ、また、シニアカーについてはあまり積極的に乗りたいと感じないという。そのなかで、WHILLが全く新しい移動手段を提案したいということで、今回の新製品の提案につながった。
1充電あたりの航続可能距離は33kmで実用性も高い
WHILLが現在展開している「Model C2」や「Model F」は、なんとか100m程度歩ける層、そして今回の「Model S」は500m程度歩ける層がターゲットイメージだという。「Model C2」や「Model F」のターゲットとなる約500万人に対し、「Model S」は700万人ほどが新規のターゲットコア層となる。
車両を見てみると、いかにもシニア層向けというような感じではなく、もう少し洗練された感覚がある。それは、ハンドルおよびメーター周りのデザインなどに見てとれる。バッテリー残量計や速度調整ダイヤルは、バイクやクルマの操作系を踏襲したイメージとなっている。
今回用意された4色のボディカラーは、それぞれ「アイコニックホワイト」、「シルキーブロンズ」、「ガーネットレッド」、「ラピスブルー」というネーミングとし、カラー選定の時間もわくわく楽しんでほしいという願いが込められている。
車両スペックとしては、全長1190mm×全幅553mm×全高920mmとなり、前進時の速度は1~6km/hで調節可能。最小回転半径は1480mm、車両重量は63kgとなる。バッテリーは12Vの鉛バッテリーを2個装備している。
充電はハンドル下およびシート下の2カ所に充電プラグを差し込み口を用意する。段差乗り越えは7.5cm、1充電当たりの航続距離は33km、標準装備の前かごは12Lの容量で、最大4.0kgを載せることができる。シートは3段階の高さ調整、2段階の前後調整が可能。フック、ミラー、アームレスト、杖ホルダーなどのオプションも用意する。
WHILLでは、プロダクトだけでなくサービスとの両輪を強く推し進めていくとしている。IoTサービスを提供するアプリ「WHILL Family App」も開発。本人と家族が外出情報を共有したり、WHILLの機体の位置や状態を確認したりできるようになるという。
こちらは、保険やロードサービスなどをセットにし、「Model S」のプレミアムなサービス「WHILL Premium Care」として、2023年1月以降に開始するとしている。ちなみにこのプレミアムケアのないノーマルの「Model S」は、2022年11月からデリバリー開始予定となる。
WHILLでは同社HPやコンシェルジュデスク(電話)、さらには全国の取扱店で同日から先行受注を開始する。その価格は21万8000円~(非課税・送料調整費別)となり、「WHILL Premium Care」は年間2万6400円(税込み)で利用可能となる。