キラキラな高級車でも足元が真っ黒だとガッカリ
どうして欧州車のホイールの汚れは国産車に比べてひどいのだろうか? それは、そもそもブレーキパッドの材質に違いがあるからだ。日本の公道で良識ある速度域で走るだけであれば、低ダストのパッドに交換するとブレーキダストによるホイールの汚れから解放されることをご存知だろうか
輸入車と国産車ではブレーキパッドの素材が異なる
輸入車、とくにヨーロッパ系のクルマは、ホイールを洗って洗っても、すぐに真っ黒になってしまいがちだ。その原因は「ブレーキダスト」。制動時にブレーキパッドとローターが削れたカスが、ホイールに付着してしまうのである。
国産車でもブレーキパッドからカスは発生しているものの、その成分が異なることが、輸入車のブレーキダストが目立つ大きな理由だ。国産車の純正ブレーキパッドのほとんどの素材は、「オーガニック系」と呼ばれるもの。ひと昔前は「ノンアスベスト系」と呼ばれたもので、鉄分ではなく、樹脂やそのほかの成分が主となる。そういった成分はカスが発生してもホイールに刺さりにくい。
対する輸入車は、純正ブレーキパッドにも鉄分が多く含まれている。この金属成分が削られて放出されるときに、ホイールの塗装に噛み付いてしまい、しつこいブレーキダストが溜まってしまうのだ。
アウトバーンのような超高速域からの制動にフォーカスしているのが欧州車
もちろん輸入車メーカーもそのようなことは百も承知だ。しかし、欧州のハイスピードな高速道路や、日常的に高い速度レンジに対応させ、超高速域からでもしっかり減速させることを至上命題とすると、ブレーキが高温になって利かなくなるフェードを防ぐため、鉄などの金属成分を増やさざるを得ないのだ。そうなるとローターも同時に摩耗しやすく、さらにダストは増える傾向にある。
対する日本国内は、高速道路で120km/h制限が最高で、しかも全国的には一部の区間。そのほかの速度レンジも欧州に比べればはるかに低く、オーガニック系のブレーキパッドでも制動力に問題が起きにくい。それでいてホイールは汚れにくく、ローターも減りにくいので、クレームが起きにくいわけだ。
国産でもガチ志向の「GRヤリス」はメタル系パッドを採用
最近では国産ホットハッチであるトヨタ「GRヤリス」が、かなり攻めたブレーキパッドを純正に採用。欧州車のような金属成分の多いブレーキパッドで、かなりダストは多めに発生すると話題になった。
開発陣に聞くと「ここまでの性能のクルマなので、ある程度サーキット走行を楽しめるブレーキパッドを装着した」という。実際、ほかの国産車に比べてはるかにサーキット走行で「使える」純正ブレーキパッドになっている。
たしかにGRヤリスにサーキットをろくに走れないブレーキパッドを採用して、それでホイールが汚れにくくても、それってスポーツカーなの? という話である。
ちなみにほかの国産車だとミニサーキットでもレーシングコースで2周くらいが限界でフェードし、ブレーキの利きは甘くなってしまうのが普通だ。